第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 症例

[O35] 一般演題・口演35
循環 症例02

2019年3月1日(金) 10:00 〜 11:00 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:畠山 登(愛知医科大学)

[O35-3] 剥離性食道炎を伴った類天疱瘡を合併した重症心筋梗塞の一例

鈴木 陽介, 本山 晋一郎, 堤 丈士, 富安 貴一郎 (京都山城総合医療センター循環器内科)

【緒言】補助循環を要するような重症心筋梗塞においては種々の合併症をしばしば経験するが、今回我々は心筋梗塞後の治療経過中に類天疱瘡を合併した非常に珍しい症例を経験したため報告する。【症例】症例は69歳男性。夜間の突然の胸痛と呼吸苦を主訴に当院へ救急搬送、心電図でV1~4のST上昇を認め緊急CAGを施行。CAG所見は#6;99%狭窄であり、心原性ショックの状態でIABPを留置下にPCIを施行し、DES留置しTIMI3を得た。第2病日にVT/VFが頻発し血行動態が不安定なためPCPSを挿入し、その後第5病日にPCPSから離脱した。心機能は依然IABPによるサポートが必要な状態ではあったが、巨大血腫形成によるコンパートメント症候群のためアシドーシスが進行したため、第6病日にIABPを抜去せざるを得なかった。しかしIABP1時間後にPEAとなりCPRを行い、約20分後に自己心拍が再開した。Medicationを強化し全身状態が改善したため第14病日に抜管できた。しかし、第19病日頃から全身に多数の水疱が形成され、自覚症状がなく経過観察とした。第23病日から貧血が進行するようになり、BUN/Crの乖離もみられたため上部消化管出血が原因であると判断し内視鏡検査を施行した。胃・十二指腸からの出血は認めなかったものの、食道全域にわたり出血を伴う粘膜剥離を認めた。その後貧血の進行は止まり内視鏡検査でも食道全体が新生内膜で覆われていることを確認し、類天疱瘡に伴う剥離性食道炎が疑われた。第27病日にICUから退室できたが水疱は増加傾向であり掻痒感も自覚するようになった。水疱の病理所見は類天疱瘡として矛盾のない所見であったため、ジアフェニルスルホンの投与を開始したところ水疱は形成されなくなり痂皮化した。また右下腿筋の一部が褥瘡に伴い壊死しデブリードマンを要したが、リハビリにより運動機能は改善し日常生活を送れるようになった。【結語】類天疱瘡は表皮基底膜に対する自己抗体が関与する自己免疫疾患であるが、今回いかなるきっかけで発症したかは明らかではない。ただし本症例では経過から心肺停止を契機に類天疱瘡を発症した可能性は出来ない。この点について文献的考察を踏まえ報告する。