[O35-5] 出血性疾患を背景とした、たこつぼ型心筋障害の診断と管理について
【背景】たこつぼ型心筋障害は除外診断が基本であり、冠動脈疾患の除外のため、冠動脈造影検査が必要となる。しかし主疾患が出血を伴う場合、急性期にその評価は行い難く、他のモダリティを用いる、経過観察するなどにより総合的に判断する必要がある。また、比較的良性な経過を辿るが、中には循環動態が破綻する例もあり、注意が必要である。【目的】出血を伴うため急性期に冠動脈造影検査が行えない、たこつぼ型心筋障害の診断方法と管理について明らかにする。【方法】2016年10月から2018年7月までの22か月間に、非循環器主治医の頭蓋内出血と肺出血でICUに入室した患者の中からたこつぼ型心筋障害合併例を抽出し、循環器科主治医で担当したたこつぼ型心筋障害例と、診断方法や経過について、後ろ向きに比較検討する。【結果】頭蓋内出血は45例認められた。このうちクモ膜下出血は内因性22例、外因性5例で、たこつぼ型心筋障害合併は前者に2例認められた。喀血など肺出血は5例認められ、たこつぼ型心筋障害合併は1例であった。いずれも冠動脈造影はなされず、心エコー図検査、心電図検査、経過により、たこつぼ型心筋障害と疑い診断された。血行動態が破綻したものは1例のみで、ホスホジエステラーゼIII阻害薬には反応せず、カテコラミンの投与で回復した。いずれの症例においてもICU退室後、冠動脈造影など精査は行わず、他院へ転院となった。一方、循環器科主治医であった2例は、敗血症性ショックと心肺停止蘇生後の症例で、いずれも入室前に冠動脈造影が施行された。【結論】たこつぼ型心筋障害を確定診断するには急性期の冠動脈造影が必要だが、それを行えない場合、他の手段による診断補助が重要である。また主治医が非循環器科の場合、集中治療医がその補助と全身管理を行い、早期の回復に寄与することができる。