[O35-7] 冠動脈穿孔を来したたこつぼ型心筋症の1例
【背景】たこつぼ型心筋症は一般に予後のいい疾患とされているが、時に重症化し、合併症により致命的になる場合がある。その中でも心破裂を来し致命的であった症例の報告はあるが、冠動脈破裂を来したという報告は無い。【臨床経過】症例は86歳、男性。X-1日、下腹部痛と嘔吐があったが様子を見ていた。X日、朝から発熱、悪寒、呼吸困難感が出現し救急要請となった。来院時は意識清明、体温40.3℃、血圧176/73mmHg、脈拍156bpm、酸素10L投与下で経皮酸素分圧75%であった。人工呼吸器管理を開始し、それまでに胸部症状はなかったが、心電図でV2からV6でST上昇とトロポニンIの上昇があり、急性冠症候群を疑って緊急冠動脈造影を施行した。冠動脈には有意狭窄はなく、左室造影でたこつぼ様の壁運動を認め、たこつぼ型心筋症と診断した。病歴や検査所見から、敗血症に伴いたこつぼ型心筋症を発症したと考えたが、カテコラミン使用下でも血圧が低下し、乳酸値も来院時5.5mmol/Lから13.3.mmol/Lと徐々に上昇傾向にあり、循環不全を来していたため経皮的心肺補助装置を導入・開始した。集中治療室に入室後、突然STが上昇しすぐに心停止した。心エコーでは大量の心嚢液貯留があり、穿刺したところ血性であった。心嚢ドレーンを留置したが、大量の排液を持続的に認め、御家族がそれ以上の加療を望まなかったため、死亡となった。たこつぼ型心筋症から心破裂を来したと考え、心臓のみという承諾のもと剖検を行ったところ、心筋に損傷はなく、左冠動脈前下行枝入口部の穿孔と心外膜下脂肪組織への出血を認め、冠動脈穿孔による心タンポナーデが直接死因であった。【結論】因果関係は不明ではあるが、今回敗血症を契機にたこつぼ型心筋症を発症し、その後心停止となり、剖検で冠動脈穿孔を診断した1例を経験したため報告する。