[O37-3] ATP投与により心電図で発作性心房細動の興奮波を捉えた1症例
【背景】発作性上室性頻脈の治療にアデノシン三リン酸(ATP)が用いられることがあるが、その際に心電図で発作性心房細動の興奮波を詳細に捉えたという文献報告は見当たらない。【臨床経過】施設入所中の90歳台女性、頻脈性不整脈の既往なし。胸部症状の自覚はないが、これまで見られなかった頻脈発作が出現して数時間に及んで持続しているため当院救急外来を受診した。来院時、脈拍160~180回/分でR-R間隔が規則的に見える上室性の頻脈が認められた(下図上段)。体調不良の訴えはなく、発熱、脱水、感染症等を示唆する所見は見られず、二次性に誘発された頻脈性不整脈は否定的であった。血圧は正常範囲内に維持されていたが心房内での血栓形成が危惧されたため、発作性上室性頻拍に対してATP 10mgの急速静脈注射を実施した。ATPの投与によって房室伝導を遮断したところ、12誘導心電図で約350回/分の心房波が記録され(下図下段)、これは発作性心房細動の起因となる興奮波であると考えられた。ATPの効果消失後には元の上室性頻脈へ復帰したが、最終的にピルジカイニド塩酸塩を投与することで脈拍80回/分前後のレートコントロールが得られた。【結論】発作性上室性頻拍に対してATPを投与することで、心電図上明確な興奮波を単離して詳細に捉えることができ、発作性心房細動の起源同定と治療方針決定に有用と考えられた。