[O37-5] 三次救急搬送された重症症例に対する7Frシース対応細径 IABOカテーテルの使用経験
【背景と目的】2013年10月に発売された7Frシース対応の細径IABOカテーテル(Rescue Balloon:以下RB)は挿入や抜去のしやすさから、対象疾患を拡大させてきた。さらに2017年6月に発売されたカテーテル保護カバー付きのRescue Balloon ER (以下ER)は、RBに比べて、挿入後のカテーテルの深さの微調整ができ固定しやすいという利点を有している。しかしながら、ERに関しては、使用成績についての報告がこれまで殆どなされていないのが現状である。 【方法】当院の救命救急センターに三次救急搬送され、RBとERが使用された症例について、背景因子や治療成績について後方視的に比較検討した。 【結果と考察】IABOカテーテルによる血流遮断が試みられた25例のうち、挿入困難の2例(RBとER1例ずつ)を除いた23例について、RBとERとを比較検討した。RBは2014年6月-2017年10月の期間で17例(0.4例/1ヶ月)に対して使用されていた(以下RB群)。内訳は男10例、女7例、年齢は53±22歳。対象疾患は外傷6例、内因性疾患11例(産婦人科疾患5例、腹部大動脈瘤破裂4例、上部消化管出血2例)であった。一方ERは2018年2月-5月に6例(1.5例/1ヶ月)に使用され(以下ER群)、その内訳は男2例、女4例、年齢は62±19歳。原因疾患は外傷1例、内因性疾患5例(上部消化管出血2例、産婦人科疾患1例、その他2例)であった。 大動脈の遮断方法は、RB群が完全遮断11例、部分遮断6例、ER群が完全遮断1例、部分遮断5例で、部分遮断使用率を比較するとRB 35%、ER 83%とER群で高い傾向があった(p=0.07)。 使用前後のShock index の推移は、RB群で1.91±0.17から1.08±0.10、ER群で1.74±0.28 から0.81±0.17で、ショックの改善効果はER群の方が優れている傾向がうかがえた(p=0.19)。 合併症は、RB群にはみられなかったが、ER群には1例に上腸間膜動脈塞栓症による腸管壊死が発生し、開腹手術による血栓除去と壊死腸管切除が行われた。 死亡は、RB群に7例あり全例が24時間以内の出血死であった。一方ER群では1例が24時間以内の出血死、3例が遠隔死亡であった。 【結語】ERの発売開始以降はRBに替わってERが用いられていた。対象疾患は内因性疾患に拡大し、使用頻度は増加した。また、ERでは部分遮断が積極的に用いられる傾向にあり、治療成績についてはRBに対して非劣性が示された。ERは使用し易く、有効な治療手技となることが期待された。