[O38-1] ST上昇を伴わない心肺停止蘇生後症例における冠動脈造影の関係の検討
【背景】日本蘇生協議会蘇生ガイドラインでは院外心停止症例における早期冠動脈造影(CAG)は,自己心拍再開後の12誘導心電図でST上昇を伴う場合推奨されているが,非ST上昇症例では現場判断に委ねられている.先行研究から初期波形が無脈性心室頻拍(pVT)・心室細動(VF)ではCAG施行が有効と予想されるが,無脈性電気活動(PEA)・心静止(Asystole)では不明である.【目的】本邦の成人心肺停止蘇生後,非ST上昇症例のCAG施行状況を記述し,社会復帰率との関係を検討する.心肺停止蘇生後の心電図上非ST上昇症例において,初期波形毎にCAG施行による予後との関連を明らかにする.【方法】日本救急医学会多施設共同院外心停止レジストリにおいて2014年6月~2015年12月に登録された院外心肺停止症例のうち,18-80歳で明らかな非心原性の要因がなく,自己心拍再開後12誘導心電図でST上昇を認めなかった症例を対象.主要アウトカムは30日後社会復帰率(CPC 1or2)とし,CAG施行との関連を年齢,性別,初期波形,目撃,バイスタンダー,アドレナリン投与,除細動の有無で調整し多変量ロジスティック解析を用いて解析した.感度分析として初期波形別(pVT・VF群とPEA・Asystole群)に層別化し同様の解析を行った.【結果】登録された院外心肺停止例13,491例のうち,938例が解析対象であった(年齢中央値 67歳[四分位 55-74歳], 男性72%).CAGを施行された群は327例(34.9%)であった.CAGを施行した群は施行しなかった群に比して有意に30日後社会復帰率が高かった(45.9% vs. 9.7%, P<0.001).多変量ロジスティック解析においてもCAG施行は30日後社会復帰率に有意に関与していた(OR 3.0, 1.7-5.3 95%CI, P<0.001).初期波形別にみるとpVT・VFが320例,PEA・Asystoleが531例,初期波形不明が87例であった.pVT・VF群では65.9%(211例)でCAGを施行されており,非CAG施行群と比して有意に30日後社会復帰率が高かった(47.4% vs. 29.4%; OR 2.5, 1.1-5.4 95%CI, P=0.03).PEA・Asystole群においては12.8% (68例)でCAGが施行された.この集団においても非CAG群と比して有意に30日後社会復帰率が高かった(19.1% vs. 3.2%; OR 3.3, 1.0-10. 5 95%CI, P=0.04).【結論】本邦において明らかな非心原性の要因がない成人心肺停止症例で,自己心拍再開後の12誘導心電図でST上昇を認めなかった場合,約3分1症例でCAGが施行されていた.CAG施行症例は未施行症例に比して有意に社会復帰率が高かった.