第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

循環 研究

[O38] 一般演題・口演38
循環 研究02

Fri. Mar 1, 2019 3:00 PM - 3:50 PM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:小坂 誠(昭和大学横浜市北部病院麻酔科)

[O38-5] Wet or Dry?慢性透析患者における心臓手術の周術期体重と予後の関連

佐藤 瑞樹1, 古市 吉真2, 栗山 明1, 小野寺 睦雄1, 小宮 達彦2 (1.倉敷中央病院救命救急センター, 2.倉敷中央病院心臓血管外科)

【背景】慢性透析患者の心臓手術の周術期には過剰輸液による心不全が生じやすい一方、過度の輸液制限は循環不全を遷延させる可能性がある。しかし、このような患者における周術期の水分管理に関する明確な推奨はない。当院心臓外科では、2015年度より透析患者のリスクの層別化を行い、高リスク患者では周術期の目標体重を本来のdry weight (DW)よりも重く設定する管理方針を導入した。
【目的】合併症のリスクに応じ周術期体重を重く設定する管理が予後に与える影響を評価する。
【方法】本研究は単施設前後比較研究である。2005年1月から2018年7月までに当院で待期的に施行された冠動脈バイパス術、弁膜症手術、及びその複合手術を受けた慢性透析患者を対象とした。2015年3月までの患者 (Pre群)では、手術前日の透析での体重設定や術後の水分管理を症例毎に腎臓内科医と協議して行った。2015年4月以降の患者 (Post群)では、術前体重を高リスク患者でDW+3%に、非高リスク患者では腎臓内科医の協議で設定した。術後は1週間程度かけてDW+1kgの体重を目指した。主要評価項目は術後24時間以上の人工呼吸を要した患者の割合とし、二次評価項目は術後のlow output syndrome (LOS)や心不全の発症率、またICU滞在期間とした。カイ二乗検定、及びMann-Whitney検定を用いてPre群とPost群の2群を比較した。
【結果】Pre群142人、Post群48人であった。背景因子は年齢 (64歳 vs 72歳,p<0.001)とSTS score (5.0% vs 9.0%, p=0.01)の中央値が有意にPost群で高かったが、性別やBMI、併存疾患、術式、手術時間、人工心肺時間、術中出血量に有意差は認めなかった。高リスクに該当する症例はPre群で133人 (93.7%)、Post群で46人 (95.8%)と有意差を認めなかったが (p=0.44)、手術前日の透析後の体重はDWに比してそれぞれ-0.06%、+2.8% (p<0.001)と有意差を認めた。24時間以上の人工呼吸を要した患者はPost群で有意に少なく (34.5% vs 18.8%, p=0.04)、術後のLOS発症も有意に低下した (9.2% vs 0%, p=0.02)。術後の心不全発症 (12.0% vs 8.3%, p=0.48)やICU滞在日数 (5日 vs 5日, p=0.61)に有意差を認めなった。
【結論】新たな管理方針の導入後は術前体重が増加し、STS scoreの高い症例が多かったにもかかわらず、24時間以上の人工呼吸を要した患者の割合やLOS発症率が低下した。本管理は慢性透析患者における心臓手術の周術期をより安全に管理できる可能性が示唆された。