[O4-1] 著明な脳浮腫と出血性脳梗塞を生じた糖尿病性ケトアシドーシスの1小児例
【背景】糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)における脳浮腫の合併頻度は0.5~0.9%と稀である一方、死亡率は21~24%と高く、全DKA死の60~90%を占め、生存した場合でも10~25%に後遺症を残すと報告されている。しかし、DKAで脳浮腫を発症する詳しい機序についてはいまだ不明な部分が多い。【臨床経過】症例は生来健康な7歳女児。発症2ヶ月前より多飲・多尿を自覚していた。入院5日前より腹痛が出現し、入院4日前に微熱を認めたため近医小児科を受診した。咽頭アデノウイルス検査陽性であり対症療法にて経過観察となったが、その後も腹痛は持続していた。入院2日前より嘔気・嘔吐を伴うようになり、入院当日(第1病日)未明より意識障害(JCS1)が出現したため、二次救急病院へ救急搬送となった。随時血糖値:1025mg/dL、静脈血pH:6.983 HCO3-:7.0mmol/L、尿ケトン3+より重症DKAとして補液・インスリン治療が開始され、同日日中には一旦意識状態の改善(JCS0)を認めた。しかし、第2病日未明に嘔吐の後再び意識障害(JCS200)が出現し、頭部CTにて脳浮腫を認めたため当院へ転院搬送となった。ICU入室の上で抗脳浮腫治療・血糖コントロールなどの全身管理を行ったが意識障害は持続し、第6病日の頭部MRIで後頭葉・基底核・中脳などに出血を伴った広範な脳梗塞を認めた。内科的治療を継続しながら早期にリハビリを開始し、遷延性意識障害に対して第18病日よりTRH療法を2週間行った。しかし、一部脳血流の改善を認めたものの意識状態に大きな変化は見られなかった。第76病日にリハビリ病院へ転院して現在も治療を継続しているが、その後緩徐に意識状態の改善を認めるようになり、発語・動作も少しずつ増えてきている。【結論】自験例では水分管理に注意が払われていたにも関わらず著明な脳浮腫を生じ、出血性脳梗塞まで併発しており、複数の要因が合わさって病態が形成されたと考えられた。DKAで脳浮腫を発症する詳しい機序を明らかにするためには、更なる症例の蓄積が望まれる。