第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

内分泌・代謝 症例

[O4] 一般演題・口演4
内分泌・代謝 症例02

2019年3月1日(金) 16:05 〜 16:55 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:中野 実(前橋赤十字病院)

[O4-4] 術後正常血糖の糖尿病性ケトアシドーシスを発症したSGLT2拮抗薬内服患者の一例

中野 貴明1, 竹本 正明1, 杉浦 潤1, 金澤 将史1, 前場 覚2, 秋山 知明3, 伊藤 敏孝1 (1.新百合ケ丘総合病院 救急科, 2.新百合ケ丘総合病院 糖尿病内分泌内科, 3.新百合ケ丘総合病院 心臓血管外科)

【背景】Sodium-glucose contransporter-2 (SGLT2) 拮抗薬はケトアシドーシスを惹起する可能性があると、アメリカ食品医薬品局が警告している。今回、冠動脈バイパス術後、当日夜間より急激にアシドーシスが進行し、血糖値は高値ではない糖尿病性ケトアシドーシスを発症した一例を経験した。【臨床経過】55歳男性。X-1日、オフポンプ冠動脈バイパス術目的に入院。この日の朝に、SGLT2拮抗薬(エンパグリフロジン)を最終内服。X日、オフポンプ冠動脈バイパス術施行された。術後、集中治療室に帰室。帰室後の血液ガスデータでは軽度のアニオンギャップ(AG)増加代謝性アシドーシスが認められたが、覚醒状況問題なく帰室後4時間で抜管となった。X日の血糖値は血液ガスで90-135mg/dlであり、全身状態も問題なく経過観察となった。X+1日、AGは18mmol/Lまで増加し、PH 7.181まで低下したために当科コンサルトとなった。尿糖値(1時間蓄尿320ml)は3172mg/dlであり、手術以前の尿糖値は不明だが、X+1日の尿糖排泄量は50g/日を超えると計算された。尿検査でケトン体3+であったことよりSGLT2拮抗薬の作用により正常血糖に維持された糖尿病性ケトアシドーシスと診断した。インスリン持続投与を4U/時で開始とし、X+2日、早朝にはPH 7.432、AG 6mmol/Lまで改善を認めた。持続投与は1U/時に減量し、X+3日にはインスリンヒト速攻型の4U-4U-4Uの皮下注に変更し、同日、集中治療室退室となった。尿糖値はX+5日まで計測継続をしたが最終継続でも2917mg/dlと高値を示していた。体内インスリン濃度にて、術前は1.8であったが術直後に27.3mgまで上昇していることが確認された。患者はX+16日に独歩退院となった。【結論】SGLT2拮抗薬内服患者の術後に正常血糖を示した糖尿病性ケトアシドーシスを経験した。インスリン濃度が顕著に上昇していることより、外科的侵襲に伴うインスリン拮抗作用がグルコースの細胞内移動を妨害することにより、ケトアシドーシスが惹起されたと考えられた。しかし、SGLT2拮抗薬の作用遷延により血糖値が正常範囲内に維持されていた。正常血糖であってもSGLT2拮抗薬内服患者はケトアシドーシスを発症することに注意が必要である。