[O4-6] Extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)の早期導入により救命できた褐色細胞腫クリーゼの一例
【背景】褐色細胞腫クリーゼはカテコラミン過剰放出による急速な多臓器不全を来たし時に致死的な病態となる。そのため、迅速な診断と特異的な治療が必要となるが、褐色細胞腫の診断がついていない状態でクリーゼによる多臓器不全を発症した場合には診断に苦慮することも多い。今回、我々は適切に診断を行い、venovenous extracorporeal membrane oxygenation(VV-ECMO)の早期導入など内科的集中治療管理により救命が可能であった褐色細胞腫クリーゼの一例を経験したため報告する。【症例経過】症例は34歳、男性。第一病日起床時からの頭痛、動悸、胸痛を主訴にA病院に救急搬送。経胸壁心臓超音波検査で壁運動異常を指摘、冠動脈造影検査施行されたが異常はなかった。胸痛の原因検索のため施行された単純CTで左副腎部分に8cm大の腫瘍と周囲の血腫が認められ、副腎腫瘍からの出血性ショックが疑われB病院に転送となった。転送後に造影CT施行、出血の増大や造影剤の漏出はなかったが、不安定な血圧変動と呼吸不全を認め、対応困難とのことで当院に再転送となった。来院時現症:意識清明、血圧130/80mmHg(ニカルジピン1γ使用下),脈拍140回/min、呼吸数24回/min (SpO2 93%、酸素マスク5L/min投与下)、体温38.6℃。採血検査は軽度の肝酵素上昇と腎機能障害を認め、トロポニンIは44.589 ng/mlと異常高値であった。B病院で施行された胸腹部造影CTで両側下肺野に浸潤影あり、腫瘤から造影剤の漏出はなかった。副腎腫瘍破裂による出血性ショックの影響は少ないと考え血管内治療の適応でないと判断した。経過から褐色細胞腫自然破裂によるクリーゼと判断し、集中治療室での管理を行うこととした。第二病日より循環動態が不安定となり昇圧剤を開始、呼吸不全も増悪したため人工呼吸管理、同日夜にはVV-ECMOを導入した。第七病日ショックを離脱しα遮断薬を開始、同日夜にVV-ECMO離脱、翌日抜管し、第十病日に退室した。その後の精査で褐色細胞腫と確定、一旦退院後待機的に副腎摘出手術を行った。【結論】急速に進行する原因不明の呼吸・循環不全において不安定な血圧変動を伴った場合には褐色細胞腫クリーゼを念頭に置く必要がある。多臓器不全を来したクリーゼは薬物療法のみでは全身管理に難渋する場合も多い。リスクの高い緊急手術を避けるために、ECMOなどの体外循環を積極的に用いた内科的集中管理を行う重要性が示唆された。