第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液・凝固 症例

[O40] 一般演題・口演40
血液・凝固 症例02

2019年3月1日(金) 16:30 〜 17:10 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:阪本 雄一郎(国立大学法人佐賀大学医学部救急医学講座)

[O40-1] 当ICUでの、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体注射薬の使用経験

竪 良太, 鶴 昌太, 平松 俊紀, 小西 良一, 安達 普至 (飯塚病院 集中治療部)

【背景】ICU入室患者では手術が不要でも、感染巣ドレナージ、CHDF、ECMO等の治療のために緊急で観血的処置を要する事が多い。ワーファリン内服中でPT-INRが過延長している場合に、ビタミンK製剤やFFPの投与だけではリバースに時間を要し、治療の開始が遅れてしまう事がある。2017年9月に乾燥濃縮人プロトロンビン複合体注射薬(ケイセントラ)が発売となり、その臨床効果が注目されている。発売開始以降、当ICUでケイセントラ使用症例を計2例経験したため報告する。【症例】1)77歳女性。体重48kg。発作性心房細動に対してワーファリン内服中。悪寒を主訴に当院へ救急搬送され、結石性腎盂腎炎による敗血症性ショックの診断で、尿管ステント挿入術を試みたが、困難であり、一旦ICUに入室した。腎瘻造設術を予定していたが、PT-INRが4.13と過延長していたためビタミンK製剤とケイセントラ1750単位を投与し、30分後にPT-INRが1.25まで低下した後に腎瘻造設術を施行した。経過中にDIC・電撃性紫斑病を併発したが、敗血症性ショックは軽快し、第24病日にICUを退室した。2)79歳女性。体重80kg。慢性心房細動に対してワーファリン内服中。慢性心不全の急性増悪のため前医に入院し、利尿薬では効果が乏しく、腎機能が更に悪化したため当院に紹介搬送となった。AKI・2型呼吸不全・敗血症性ショックの診断でICUに入室した。バスキュラーアクセスを挿入してCHDFを導入する予定であったが、PT-INRが14.65と過延長していたためビタミンK製剤とケイセントラ4000単位を投与し、30分後にPT-INRが1.11まで低下した後にバスキュラーアクセスを挿入し、CHDFを開始した。CHDFによる除水と抗菌薬投与を行い、循環・呼吸の改善に伴い腎機能も改善し、第7病日にCHDFを離脱し、第8病日にICUを退室した。第3病日からPT-INRの再上昇が見られたが(最大1.84)、ケイセントラ投与に伴う血栓症等の合併症はなかった。【結語】2症例に対して観血的処置前のケイセントラ投与を行い、その後の観血的処置を迅速に行う事ができた。症例1ではDIC・電撃性紫斑病の発症にケイセントラが関与した可能性は否定できなかった。当院ではこの2例のみの使用であり、今後使用経験を重ねる必要がある。