第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液・凝固 研究

[O41] 一般演題・口演41
血液・凝固 研究01

2019年3月1日(金) 17:10 〜 18:00 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:江口 豊(滋賀医科大学医学部救急集中治療医学講座)

[O41-5] 肺塞栓症患者の治療効果(肺塞栓残存の有無)判定における可溶性フィブリンの有用性

矢田 憲孝, 宮本 真紀子, 西村 伸城, 川島 浩正, 米今 諒, 田井 義彬, 對馬 恵美子, 大野 史郎, 吉本 清巳, 西尾 健治 (奈良県立医科大学 総合医療学)

【背景】深部静脈血栓症(DVT)および肺塞栓症(PE)は、救急・集中治療領域において重要な疾患である。D-dimerはDVT診断に有用だが、DVTのみでD-dimerは上昇するためPE合併の有無を診断するのは難しい。可溶性フィブリン(SF)はリアルタイムのトロンビン形成を表すとされ、以前に我々はDVTにPEを合併した患者でSFが有意に上昇することを示した。さらに今回、PE患者の治療効果判定にSFが有用であるか後方視的に検討することとした。【目的】PE患者における治療によるPE消失とSFとの関連を検討する。【方法】2012年4月から2018年3月に当科で治療したDVT患者のうち、造影CTもしくは肺血流シンチグラフィーでPE合併を診断され、1か月以内にフォローの画像評価をされた者を対象とし、SFおよびD-dimerの推移を評価した。【結果】DVT患者86例のうちPE合併は39例であった。PE合併群では初期診断時のSF陽性(基準値以上)の頻度が高く(SF陽性率:PE群92.3% vs non-PE群53.2%,p<0.001)、一方でD-dimerは全例で上昇しており両群間に差を認めず、多変量解析でSF陽性がPE合併に関する独立した危険因子であった(p=0.001)。PE合併例で治療開始後1か月以内にフォローの画像評価をされたのは15例(PE消失9例,PE残存6例)あり、PE消失群では全例がSF陰性となっており(SF陽性率:PE消失群0% vs PE残存群83.3%,p=0.02)、D-dimerは両群間に差を認めなかった。また、PE残存の有無に関するROC解析で、SFはAUC:0.96と良好な予測因子であった。【結論】SFはPEの初期診断および治療効果判定に有用である可能性が示唆された。特に画像評価を頻回に施行し難い状況では、簡便に評価が可能なSFは有用性が高いと考えられる。