第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

血液・凝固 研究

[O42] 一般演題・口演42
血液・凝固 研究02

Fri. Mar 1, 2019 6:00 PM - 6:50 PM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:小川 覚(京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学教室)

[O42-3] 【優秀演題(口演)】3度熱中症例においてICU入室後にDICを合併する予測因子に関する検討

岡野 雄一, 石蔵 宏典, 濱 義明, 堀 耕太, 大高 俊一, 奥本 克己 (熊本赤十字病院 第一救急科)

【目的】熱中症は高温環境で生じる疾患であり、近年の猛暑の影響で患者数が増加し社会問題になっている。集中治療室(ICU)に入室する3度熱中症患者は、救急外来(ER)での冷却処置等の初期対応により、合併症なく転帰良好にて退院する症例が多いが、中にはICU経過中に凝固障害が進行しDICを合併する症例があり、一旦DICを合併するとICU管理が長期化し、死亡率も高くなる。熱中症におけるDIC進行のマーカーとしては、HMGB1値やHistoneH3値などの報告があるが、市中病院では測定困難である。そこで今回我々は、ER搬入時の情報からDICの合併を推測できないかと仮定した。本研究の目的は、DICを合併した3度熱中症症例を調査し、ER搬入時の初回データからDIC合併の危険因子を検証することである。【方法】 対象は2009年から2018年の10年間において、当院ERに搬送されICU管理を要した3度熱中症患者(成人、57例)とし、主にカルテを参考に後向き観察研究を行った。DICの診断は、日本救急医学会の急性期DIC診断基準を用い、4点以上でDICと診断した。またDIC合併例12例(DIC群)とDIC非合併例45例(非DIC群)において、ER搬入時点での検査データや既往歴、処置内容及び重症度scoreについて比較検討し、DIC合併の危険因子を抽出した。【結果】 対象症例57例のうち、12例(21.1%)がICU入室中にDICを合併し、入院からDIC診断までの日数は3.3±1.3日、DIC score(最高点)は6.5±1.2であった。またDIC群のICU入室日数は中央値7±4日、転帰は、死亡4例(33.3%)、高度障害2例(16.7%)、軽度障害2例(16.7%)、社会復帰4例(33.3%)であった。DIC群と非DIC群を比較検討した結果、単変量解析において、精神科疾患(うつ病、統合失調症等)の既往歴、SOFA score、血小板数、搬入から38度までの冷却時間の5項目で有意差を認めた。また多変量解析において、精神科疾患の既往歴(オッズ比(OR)1.83、95%信頼区間(CI)0.17-0.41)、SOFA score(OR 2.61、95%CI 0.10-0.82)、38度までの冷却時間(OR3.26、95%CI 0.02-0.07)の3つの因子が有意なDIC合併の予測因子として検出された。【結語】今回の検討では、精神科疾患の既往あり、SOFA scoreが高値、長時間の高体温暴露が3度熱中症のDIC合併と関連していた。これらの危険因子を有した患者がICUに入室した場合は、DICに至る可能性が高く、特に厳重な管理が必要である。