[O43-4] 市販の鎮咳剤による急性薬剤中毒を経験して-その共有と警報の発信-
【背景】救急医療における中毒患者の占める割合は高い。中毒診療では起因物質が同定出来るとその後の診療が容易になる。しかし、即時結果が入手できる同定検査は限られているため、該当中毒の存在を知ったうえでのトキシドロームによる診断が有用である。このためには、時代の流れとともに現れた新顔の中毒の存在を知っておく必要がある、そのひとつを紹介して共有し、会員の中毒診療に寄与したい。【臨床経過】23歳女性、深夜市販の「薬剤A24錠」と「薬剤B12錠」を服用後、飛び降り自殺を試みようとした、直前に掛けた知人への電話の説得で思いとどまって救急受診した、搬入時、バイタルは保持されていたが、瞳孔散大、対光反射鈍く、意思疎通困難、多幸的で、幻覚や幻視がある、下肢にミオクローヌスを認め、腹部全体に痛みを訴え、腸蠕動が亢進していた、血液検査では、CKが2500、WBCが12000と高い以外は特異所見は無かった、トライエージのOPIが陽性であった、病態が複雑であり、診断に苦慮した、しかし、その後、全身管理のみで2日間で軽快した、軽快後の聴取で、起因物質は、コンタックST(DXM720mg)とコンタックW(DXM360mg)と判明した、文献検索すると、DXM中毒として、病態が説明可能であった、本薬剤による中毒は、容量依存性に、興奮、神経過敏から、多幸感、幻聴、幻視、幽体離脱体験、から、完全な解離状態までの症状を示す、また、濫用による中毒は、米国では既に年間6000名の救急搬送があることを知った。【結論】ネット検索により、本邦でも使用者からトリップが可能、多幸感が得られる、合法でMDMAと同じ効果が得られる、メジコン、ベンザエース、エスエスブロン液でも同様である、などの体験談が流布されており、濫用者が増加していることを知った。今後も同じ中毒患者が搬送される可能性が高いため、その存在を念頭に置いて中毒診療を行うべきである。