第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

中毒

[O44] 一般演題・口演44
中毒02

2019年3月1日(金) 09:40 〜 10:30 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:辻田 靖之(滋賀医科大学医学部附属病院救急・集中治療部)

[O44-3] マグネシウム製剤の単回投与で致死的血中濃度の高Mg血症を来たした1症例

鶴 昌太, 竪 良太, 平松 俊紀, 小西 良一, 安達 普至 (飯塚病院 集中治療部)

【背景】マグネシウム(Mg)製剤は緩下剤として広く使用されており、便秘症に対する治療や、腸管内容物の排除を目的として下部内視鏡検査の前処置に使用される。重大な副作用の1つに高Mg血症があるが、腎臓のマグネシウム(Mg)排泄能は非常に高く、高Mg血症の多くは重度の腎障害患者に起こる。【症例】80歳台男性。排便は良好であった。意識障害、甲状腺クリーゼの診断で入院加療中に貧血を認めた。上部内視鏡検査で胃潰瘍を認めたが活動性出血なく、待機的に下部内視鏡検査の方針となった。内視鏡施行前日に前処置としてクエン酸マグネシウム散を用法・用量通りに(クエン酸マグネシウムとして34g)内服した。内服前のCre 0.96 mg/dl、eGFR 61.79 ml/分/1.73m2、血清Mg値2.3mg/dl(正常1.8~2.4mg/dl)であった。内服から約3時間後に急激にショックとなり、ICU入室した。血清Mg値 10.7mg/dlと致死的な濃度上昇を認め、高Mg血症による循環不全と診断し、高流量CHDFを開始した。CHDF開始6時間後には血清Mg値 5.9mg/dlまで低下し、徐々に循環は改善した。同日の下部内視鏡検査、造影CTでは明らかな異常所見を認めなかった。第2病日、血清Mg値 4.3mg/dlとさらに低下し、循環はさらに安定した。第3病日にCHDF終了し、第4病日の血清Mg値 2.3mg/dlと正常範囲まで低下しICUを退室した。【結語】Mg製剤を用法・用量通りに単回投与しただけでも血中濃度が著明に上昇する可能性がある。