[O45-3] 有機リン中毒の治療中に二峰性に症状が再燃し心停止に至ったと考えられた一症例
【背景】有機リン中毒においては遅発性に症状が出現することや二峰性に症状が出現することがあるとされているが、その頻度は稀である。今回当院において有機リン中毒の治療中に心停止に至り、原因として症状の再燃が疑われた一例を経験したため報告する。
【臨床経過】80歳、女性。最終健常確認から4時間後に自宅で倒れているところを発見され当院に救急搬送された。来院時の所見としては、呼吸数6 /min、SpO2 90 %(酸素10Lリザーバー付きマスク)、心拍数 40 /min、血圧 85/50 mmHg、JCSIII-300、瞳孔径2mm/2mm、対光反射は両側緩慢、口腔から有機溶剤臭あり、肛門は弛緩し便失禁あり、ChE 7 U/Lと低下あり、これらの所見から有機リン中毒が疑われたが服毒時刻がはっきりしなかったため胃洗浄や活性炭投与は行われず、気管挿管・人工呼吸管理を開始、アトロピン・PAMの投与を行われ集中治療室に入室した。PAMの持続投与が行われ第二病日の朝までにChEは30 U/Lまで経時的に上昇し、縮瞳も改善し対光反射も両側で迅速に見られていたが、第二病日の午後に徐脈、血圧低下から心停止に至った。胸骨圧迫、アドレナリン投与により自己心拍再開したが、心拍数 40 /minの徐脈であり、アトロピンの投与とドパミンによる循環補助を行ったところ安定が得られた。翌日以降の血液検査でChEの再低下を認め、有機リン中毒による症状の再燃・悪化が原因となり心停止に至ったと考えられた。治療経過中に、原因物質がマラチオンであったことが判明し有機リン中毒の診断が確定した。その後PAMの持続投与をはじめとした治療により循環・呼吸・意識状態はいずれも改善し、明らかな合併症なく第14病日に集中治療室を退室した。
【結論】有機リン中毒においてはPAM持続投与開始後、症状が改善傾向であっても、症状が再燃する可能性があることを念頭に入れて治療にあたる必要がある。
【臨床経過】80歳、女性。最終健常確認から4時間後に自宅で倒れているところを発見され当院に救急搬送された。来院時の所見としては、呼吸数6 /min、SpO2 90 %(酸素10Lリザーバー付きマスク)、心拍数 40 /min、血圧 85/50 mmHg、JCSIII-300、瞳孔径2mm/2mm、対光反射は両側緩慢、口腔から有機溶剤臭あり、肛門は弛緩し便失禁あり、ChE 7 U/Lと低下あり、これらの所見から有機リン中毒が疑われたが服毒時刻がはっきりしなかったため胃洗浄や活性炭投与は行われず、気管挿管・人工呼吸管理を開始、アトロピン・PAMの投与を行われ集中治療室に入室した。PAMの持続投与が行われ第二病日の朝までにChEは30 U/Lまで経時的に上昇し、縮瞳も改善し対光反射も両側で迅速に見られていたが、第二病日の午後に徐脈、血圧低下から心停止に至った。胸骨圧迫、アドレナリン投与により自己心拍再開したが、心拍数 40 /minの徐脈であり、アトロピンの投与とドパミンによる循環補助を行ったところ安定が得られた。翌日以降の血液検査でChEの再低下を認め、有機リン中毒による症状の再燃・悪化が原因となり心停止に至ったと考えられた。治療経過中に、原因物質がマラチオンであったことが判明し有機リン中毒の診断が確定した。その後PAMの持続投与をはじめとした治療により循環・呼吸・意識状態はいずれも改善し、明らかな合併症なく第14病日に集中治療室を退室した。
【結論】有機リン中毒においてはPAM持続投与開始後、症状が改善傾向であっても、症状が再燃する可能性があることを念頭に入れて治療にあたる必要がある。