[O45-5] 超多量のリチウム過量服薬の一例
【背景】リチウム中毒の治療には透析が有効であるが、その適応は定まっていない。また、施設によっては血中濃度を迅速に測定することができず、適応に苦慮する。透析後リバウンドを認めることもあり、透析の中止基準もその推奨は様々である。今回我々はリチウム65000mgと多量のリチウム中毒を経験し、透析適応の判断に難渋した。また、これほど多量のリチウム中毒の報告は少なく、その臨床経過を報告する。【臨床経過】56歳女性、うつ病の診断で精神科病院からリチウム600mg/dayを処方されていた。血中濃度測定は来院約4ヶ月前で0.47mEq/lであった。来院当日自室で倒れているところを家人が発見し、当院へ救急搬送となった。自室内に遺書とリチウム65000mg、モサプリド1625mg分の空包を認めた。来院時意識レベルはJCS1、症状は嘔気嘔吐のみで心電図ではQT延長を認めた。リチウムによる中毒症状と考えられ、acute on chronicのリチウム中毒と診断した。モサプリドに対して活性炭投与を行い、リチウム中毒に関しては有症状で内服量も多量であり、血中濃度が外注検査であるためHDを施行し、嘔気は改善した。第2病日にもリバウンド現象が予測されたためHDを施行した。しかし同日深夜から意識障害を認め、血中濃度も不明であったため第3病日にもHDを行ったが意識障害は進行していった。第3病日深夜に誤嚥性肺炎による呼吸不全、リチウム、敗血症による血圧低下、急性腎傷害を認め、輸液、カテコラミン、人工呼吸器管理を含む集中治療を行った。リチウム中毒に対しては循環動態不安定のため第4病日から第6病日にかけてCRRTを行った。しかしその後も意識障害は遷延し、後日判明した第2病日の血中濃度も3.69mEq/lとCRRT施行中にも関わらず高く、腎機能低下も認めているため第8-10病日、第13病日にHDを施行した。後日判明した第9病日以降の血中濃度は1.0mEq/l以下に低下しており、HD終了後も再上昇を認めなかった。透析に併行して意識障害が改善することはなく、一時的に気管切開を要したが、徐々に改善傾向となり、第30病日には気切チューブを抜去した。最終的に不随意運動が残存し、病前の意識レベルまでは改善しなかったが経口摂取は可能となり、リハビリ目的に第49病日転院となった。【結論】内服量が多量であり、予測していたリバウンドの期間を超えても血中濃度高値が続き透析の判断に苦慮した。65000mgと多量であったが重篤な後遺障害を残さず軽快した。