第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

中毒

[O45] 一般演題・口演45
中毒03

Fri. Mar 1, 2019 10:30 AM - 11:20 AM 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:笹野 寛(名古屋市立大学病院 救急科)

[O45-6] メタノール中毒患者の血清メタノール濃度の実測値を測定し推定値と比較した一例

草野 淳1, 山下 貴弘1, 伊藤 岳1, 当麻 美樹1, 長崎 靖2 (1.兵庫県立加古川医療センター 救急科, 2.兵庫県監察医務室)

【背景】メタノール中毒において血清メタノール濃度は診断に有用であるが、すぐに測定できる施設は少なく浸透圧ギャップより血清メタノール濃度を推定し診断、治療を進めるのが一般的である。しかしメタノール服用から時間が経っている場合、メタノールがギ酸に代謝され浸透圧ギャップが減少するため病状の把握が困難となることがある。今回我々は、血清メタノール濃度とギ酸濃度を実際に測定し比較したメタノール中毒の症例を経験したため、文献的考察も含めて報告する。【症例】39歳男性。搬入前日の午前8時よりメタノールを300mlほど服用した。翌日午後0時に目のかすみと気分不良が出現したため救急要請となり当院へ搬送となった。搬入時、呼吸回数30回/分、SpO2:94%(room air)、血圧153/98mmHg、心拍数98回/分、意識レベルGCS:E4V5M6、臨床症状として視覚異常を認めた。血液ガスではpH:7.198、HCO3:4.3と代謝性アシドーシス(アニオンギャップ25.7mEq/L)を認め、浸透圧ギャップ89.7mOsm/kgより推定血清濃度は287.2mg/dlと異常高値であったことからメタノール中毒と診断した。ICUに入室しフォリアミン(50mg/回)とホメピゾール(初回15mg/kg、2回目以降10mg/kg)の投与と血液透析を開始した。血液透析を8時間行い、透析後の推定血清メタノール濃度は19.2mg/dlと低下を認め40mg/dl以下となったため血液透析は終了とし、第3病日には血清メタノール濃度が9.2mg/dlと20mg/dl以下を満たしたのでホメピゾールも投与終了とした。その後、視覚異常も改善を認め第10病日に退院となった。今回の症例ではメタノールの推定血清濃度をもとに治療を行ったが、各採血の際に保存検体を採取し、実際の血清中のメタノールとギ酸の実測濃度を測定し推定値と比較したところ、血清メタノール濃度は搬入時174mg/dl、透析終了時33.9mg/dl、治療終了時15.4mg/dlと推定値と乖離はあるものの相関関係にあり、かつ治療方針を変更するほどの乖離ではなかった。また各時点でのギ酸の実測濃度は32.4mg/dl、0.76mg/dl、0.56mg/dlであった。【結語】血清メタノール濃度の実測値を測定し、推定値と比較することで推定値をもとにメタノール中毒の治療を進めることの有用性を確認できた。