第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

蘇生 症例

[O47] 一般演題・口演47
蘇生 症例

2019年3月1日(金) 14:00 〜 15:00 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:本多 満(東邦大学医療センター大森病院 救命救急センター)

[O47-4] 体温管理療法により電気的ストームを来した早期再分極症候群の一例

竹内 智, 中島 啓裕, 平山 敦士, 細田 勇人, 本田 怜史, 田原 良雄, 片岡 有, 浅海 泰栄, 野口 輝夫, 安田 聡 (国立循環器病研究センター 心臓血管内科)

背景: 心停止蘇生後に意識障害が遷延する場合、目標体温32-36℃の体温管理療法(Targeted temperature management)の施行が推奨されている。一方、低体温時には心電図でOsborn波とよばれるJ波が観察され、深部体温30℃以下で心室細動(VF)のリスクが高まるといわれている。TTM施行中にはJ波はしばしば観測され、約40%程度との報告もあるが、TTM中のJ波とVFとの関連に関しては現在のところ明らかにされていない。今回、TTMによってJ波が顕在化し、難治性のVFが誘発された早期再分極症候群(ERS)の一例を経験したため報告する。臨床経過: 症例は生来健康な33歳男性。VF による院外心肺停止のため、自動体外式除細動器による除細動3回で自己心拍再開し救急搬送となった。来院時、意識障害が遷延していたものの、呼吸・循環動態は安定していた。心電図、心臓超音波検査および冠動脈造影では明らかな器質的異常を認めなかった。蘇生後の遷延する意識障害のため、34℃24時間維持のプロトコールで体温管理療法を開始したところ、34℃時点で心電図上でJ 波の出現を認め治療抵抗性VF を繰り返し電気的ストームとなった。35℃に復温した時点でVF は消失したもののJ 波は残存しており、イソプロテノールの持続静注を開始したところJ 波の消失を認めた。以降、VFの再発を認めることなく経過良好であった。状態安定後に精査を行い、ERSによる特発性 VFの診断となった。皮下植え込み型除細動器の留置を行い、神経学的後遺症なく第23病日に退院となった。結論: 過去の報告によるとTTM中に生じるJ波は予後とは無関係であり、それ自体が難治性不整脈のリスクとなる可能性は低いとされている。一方で本症例のようにTTM中にJ波の出現から難治性VFを生じる症例は少なからず報告があり、背景としてブルガダ症候群やERSといったprimary arrhythmic disturbanceを有している可能性が指摘されている。軽度低体温を含むTTMは治療自体の有効性・安全性を示されているものの、本症例のように明らかな器質的心疾患を有さない特発性VFの症例の中には潜在性ERSの症例が隠れている可能性があり、TTMが致死的不整脈のリスクとなりうることに留意する必要がある。