[O47-5] 体温管理後に完全社会復帰した溺水後の心肺停止蘇生後脳症の一小児例
【はじめに】2015年にNEJMで報告されたRCTでは、小児の心肺停止蘇生後脳症の33℃の低体温と36.8℃の平温管理では有意差はないと報告された。現在でも小児の心肺停止蘇生後脳症の体温管理についてはcontroversialである。一方で国際蘇生連絡協議会(ILCOR)のガイドラインでは、体温管理は34℃24時間が弱く推奨されている。今回我々は、溺水後心肺停止に至った低酸素性脳症の患児に、34℃48時間で体温管理を施行し、完全社会復帰した症例を経験したので報告する。【症例】8歳女児、生来健康。プールで沈んでいる姿を発見され、救急搬送された。溺水推定時間は約10分間で、発見時には死戦期呼吸があり、bystander CPRが開始された。救急隊接触時、初期波形はPEA、発見から約15分後に車内で自己心拍再開した。病着時には瞳孔散大、除脳肢位であった。病着直後から血管内冷却装置(サーモガード)による体温管理を開始した。病着から1時間後に34℃に到達し48時間継続、48時間で36℃に復温した。以後72時間は36℃台で管理した。体温管理中に低カリウム血症を併発したが、その他合併症はなかった。溺水によるARDSを併発し、高圧での呼吸器管理を要した。好中球遊走制止目的にシベレスタットナトリウムを併用した。経過中はaEEGで脳波モニタリングを行い、画像で脳腫脹がないことを確認して第9病日に抜管した。鎮静薬による離脱症状が遷延したが、徐々に意識は清明に改善した。第29病日に高次機能障害なく、独歩退院となった。現在外来フォロー中であるが、学校に通学し、完全社会復帰している。【結語】今回、溺水による小児心肺停止蘇生後脳症を経験し、34℃48時間の体温管理を行った。後遺症なく社会復帰できた。今後も症例を重ねていきたい。