[O49-1] 目撃あり院外心肺停止例のROSC時間によるTTMへの影響 -日本救急医学会多施設共同院外心停止レジストリより-
【背景】院外心肺停止蘇生後において,体温管理療法の要否や目標温度,対象となる症例の選別方法は,明らかではない.我々はこれまでに,観察研究から心拍再開までの時間が30分以内の症例において,より低温の体温管理療法が有効な可能性を示した(Kaneko T et al. J Intensive Care 2015;3:28).今回,同様な検討を日本救急医学会多施設共同院外心停止レジストリ(JAAM-OHCA)のデータを用いて行った.【仮説】蘇生後体温管理の目標温度は神経学的予後を改善し,目撃から心拍再開までの時間が30分以内の症例ではより低温の体温管理が有効である.【方法】JAAM-OHCAレジストリの2014年6月から2015年12月までのデータを用いて,後方視的な観察研究を行った.対象期間13491例の登録から,目撃ある成人心肺停止蘇生後症例でECPRを施行していない1763例を対象とした.30日後のCPC1-2を神経学的予後良好例と定義し,神経学的予後への目標温度の影響を単変量および多変量解析を用いて比較検討した.目標体温は,体温管理なし,常温管理(35-360C),低温管理(32-340C)のカテゴリに分けて比較した.また同様な検討を心拍再開までの時間が30分以内の症例でも行った.【結果】対象全例において,多変量解析で目標体温(P<0.001,カテゴリ間比較: 常温管理v.s.体温管理なし, P=0.003, オッズ比2.443,低温管理v.s.体温管理なし, P<0.001, オッズ比2.784)であった.目撃から心拍再開まで30分以内の症例は829例が対象となり,多変量解析で目標体温(P=0.004,カテゴリ間比較: 常温管理v.s.体温管理なし, P=0.022, オッズ比2.388,低温管理v.s.体温管理なし, P=0.002, オッズ比2.230)であった.【結論】今回の検討では,体温管理なしより,常温管理・低温管理が神経学的予後改善に寄与していた.ただし常温と低温管理の間に有意差は認められなかった.これは全症例でも目撃から心拍再開まで30分以内の症例でも差はみられなかった.