第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

蘇生 研究

[O49] 一般演題・口演49
蘇生 研究02

2019年3月1日(金) 16:00 〜 17:00 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:大谷 典生(聖路加国際病院 救急部・救命救急センター)

[O49-2] 院外心肺停止生存例における腸管虚血症状の発症危険因子、予後への影響の検討

川井 廉之, 多田 祐介, 高野 啓佑, 浅井 英樹, 福島 英賢 (奈良県立医科大学 高度救命救急センター)

【背景】蘇生後の多量水様便の発生機序は不明であるが、心肺停止は循環不全の最重症化した状態であるため、腸管虚血症状によるものが大きいと考えられる。一方、腸管虚血の症状は多様であり、意識障害や鎮静下では早期診断は困難である。蘇生後における組織低灌流状態は予後不良因子であるが、腸管虚血の予後への影響は不明である。【目的】臨床症状に基づいて診断した腸管虚血の発症危険因子や予後への影響を明らかにすること。【対象】2014年4月から4年間に当院で加療した院外心肺停止症例から、18歳未満、外傷性、目撃なし、腹痛の前駆症状例、6時間以内死亡を除外した症例。【方法】腸管虚血の危険因子、予後への影響を、診療録を用いて後ろ向きに検討。本検討における腸管虚血は循環再開後に多量の水様便、下血が出現した症例とした。腸管虚血の有無で各因子を比較し、単変量解析でp<0.1となった因子でロジスティック回帰分析を用いて多変量解析を行った。予後の比較は生存曲線を用いてLog rank testを行った。【結果】713例中64例が対象となり腸管虚血は11例(17.2%)に認められた。腸管虚血は来院時乳酸値(OR1.460(95%CI,1.080-1.990))循環停止時間(OR1.050(95%CI,1.010-1.100))が独立危険因子であった。腸管虚血は予後不良であり早期死亡が多かったが、外科的治療介入の奏功例が認められた。【まとめ】腸管虚血症状は循環停止時間との関連が疑われ、組織低灌流を示唆する乳酸値も高値であった。循環再開に時間を要した場合や来院時乳酸値が高値の症例は、腸管虚血の可能性を念頭におき治療介入の遅延を回避する必要がある。