第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

蘇生 研究

[O49] 一般演題・口演49
蘇生 研究02

2019年3月1日(金) 16:00 〜 17:00 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:大谷 典生(聖路加国際病院 救急部・救命救急センター)

[O49-4] 蘇生開始までの時間短縮を目指して:患者搬送先決定までの問い合わせ回数が搬送時間に与える影響

遠藤 拓郎, 福田 俊輔, 田邊 翔太, 津久田 純平, 森澤 健一郎, 下澤 信彦, 藤谷 茂樹, 平 康彦 (聖マリアンナ医科大学 救急医学・集中治療科)

背景:当院では重症搬送症例の45%がICUに入る。集中治療室での転帰という観点では、搬送に要する時間が短く早期介入であればあるほど良い。当院でも遠方から複数回応需を断られての応需の依頼が時にある。当院応需率は95%を超えるが当地域では当院への依頼がないだけで、たらい回しにされる症例はあるのだろうか。あるならば地域として策を練る必要があるだろう。目的:1.川崎市で応需先決定までに病院への問い合わせ回数が複数回を要する症例がどの程度あるか、他地域と比べたときに頻度が多いか、2.応需先が決まらずに問い合わせ回数が増える程に現場滞在時間が伸びるというのは本当か、その時間はどの程度かを知る事を本研究の目的とした。方法:総務省の搬送人員データ2016年を利用し、重症の36万症例について搬送先決定までの問い合わせ回数を地域別に整理した。そして、搬送先決定に要する問い合わせ回数と現場滞在時間の相関分析を実施した。結果:10回以上の問い合わせで搬送先が決定した重症搬送は、全国で年間164件、神奈川県は0件であることが分かった。一方で、5~9回の問い合わせで搬送先が決定した重症搬送は、全国で年間2,644件、神奈川県53件、川崎市7件あった。そこには脳卒中や心筋梗塞などの疾患が含まれる事が分かった。また、応需先決定までの問い合わせ回数と現場滞在時間には優位に相関があり(R二乗0.535)、1回の問い合わせで3~5分の現場滞在延長がある事を確認した。結語と考察:当地域に応需先決定困難の重症搬送症例が一定数ある事、また搬送先決定までの病院への問い合わせ回数が増えるほど現場滞在時間が延びる事も明らかとなった。搬送の遅れによる状態悪化は看過できる事象ではなく、救急医と集中治療医の連携を重視し重症患者の円滑な応需システム構築の取り組みを継続していく。