第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

内分泌・代謝 研究

[O5] 一般演題・口演5
内分泌・代謝 研究

2019年3月1日(金) 16:55 〜 17:55 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:嶋岡 英輝(兵庫県立尼崎医療センター 集中治療センター)

[O5-5] ステロイド補充療法が周術期合併症に与える影響(DPCデータベースを用いた傾向スコア解析)

毛利 英之1, 城 大祐2, 松居 宏樹1, 康永 秀生1 (1.東京大学 公共健康医学専攻 臨床疫学・経済学教室, 2.東京大学 大学院 医学系研究科 ヘルスサービスリサーチ講座)

【背景】副腎クリーゼは致死的な合併症であり、長期にステロイドを内服している患者に起こりやすい。周術期においては副腎クリーゼを予防する目的に手術前にステロイドの補充を行うことがあるが、確固たるエビデンスがない。【目的】手術前にステロイドを補充することで周術期合併症を減らすことができるかを検討する。【方法】厚生労働科学研究DPCデータ調査研究班データベースを用いて後方視的コホート研究を行った。外来でプレドニゾロン換算5mg/day以上のステロイドの処方を受けており、2010年7月から2017年3月までの期間に全身麻酔手術を施行された20歳以上の患者を対象とした。手術日が入院8日目以降の患者、あるいは退院日から7日以内に再入院した患者は除外した。術前にハイドロコルチゾン100mgを点滴されたステロイド補充群と、補充をされなかったコントロール群の2群に分類し、傾向スコアを用いた1:1マッチングで周術期合併症の有無を比較した。また、術式や麻酔時間でサブグループ解析を行った。傾向スコアの推定には年齢、性別、既往疾患、術式などを投入したロジスティック回帰モデルを用いた。周術期合併症はFisherの正確確率検定またはMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。【結果】対象者は13728人であった。そのうちステロイド補充群は824人、コントロール群は12904人であった。傾向スコアによるマッチングによって823のペアが構成され、全ての説明変数において群間の標準化差は10%以下となった。ステロイド補充群はコントロール群と比べて、手術当日の血管収縮薬持続投与の使用率(24.2% vs 21.9%, p=0.27)、院内死亡率(2.4% vs 1.8%, p=0.39)、術後感染症(9.4% vs 10.3%, p=0.51)、輸血量(12.4% vs 11.7%, p=0.65)に有意な差を認めなかった。術式や麻酔時間によるサブグループ解析において、血管収縮薬持続投与の使用率に差はなかった。【結論】長期ステロイド内服患者において手術前ステロイド補充と周術期合併症の関連はなかった。