第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

蘇生 研究

[O50] 一般演題・口演50
蘇生 研究03

Fri. Mar 1, 2019 5:00 PM - 5:50 PM 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:西山 慶(京都医療センター)

[O50-6] 溺水による院外心停止に対する蘇生法と神経学転帰の関係

後藤 由和, 舟田 晃 (金沢大学附属病院 救急科)

【背景】溺水による院外心停止(OHCA)に対するバイスタンダー心肺蘇生法(BCPR)として, 基本的に低酸素がその原因であるため, 人工呼吸を含む標準的BCPRが胸骨圧迫のみのBCPRより望ましいと考えられる. しかし, これまで国家的規模のデータを用いて, 標準的BCPRの優位性を示した報告は未だない.【目的】溺水によるOHCAに対して行われた標準的BCPRと胸骨圧迫のみBCPRの成績を比較し, 至適BCPRを探ること.【方法】全国集計データ(n=15,382, 2013-2016, 救急隊蘇生施行の溺水によるOHCA)を用いた観察研究. 標準的BCPR(n=943, 6%), 胸骨圧迫のみBCPR(n=6343, 41%)およびBCPRなし(n=8096, 53%)の3群に分類し, 心停止後1か月の転帰を比較した.【結果】標準的BCPR群の転帰良好割合(粗生存率5.2%, 粗CPC 1-2率3.2%)は, 胸骨圧迫のみBCPR群(粗生存率1.5% [P<0.001], 粗CPC 1-2率0.5% [P<0.001] )およびBCPRなし群(粗生存率0.9% [P<0.001], 粗CPC 1-2率0.2% [P<0.001] )より, 有意に高値であった. 交絡因子調整後も, 標準的BCPR群は胸骨圧迫のみBCPR群より有意に転帰が良好であった(調整OR:生存, 2.28[95%CI 1.54-3.37], P<0.001; CPC 1-2, 4.42[95%CI 2.59-7.52], P<0.001; 傾向スコア(PS)調整後生存率5.2% vs 3.5% [P<0.05], CPC 1-2率3.2% vs 1.3% [P<0.01]). また, BCPRなし群との比較でも同様であった(調整OR:生存, 3.20[95%CI 2.12-4.83], P<0.001; CPC 1-2, 9.42[95%CI 5.08-17.5], P<0.001; PS調整後生存率5.1% vs 2.0% [P<0.001], CPC 1-2率3.1% vs 0.6% [P<0.001]). さらに, PS調整前および後の多重ロジスティク回帰分析では, S-CPR・目撃あり・高度気道確保器具使用なし・小児(18歳未満)の4因子がCPC 1-2と有意に正の関係であった.【結語】溺水によるOHCAに対するBCPRとして, 心停止後1か月の神経学的転帰良好割合及び生存率において, 胸骨圧迫のみのBCPRおよびBCPRがなかった場合と比較して, 標準的BCPRが優位であった.