第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

コンピュータ

[O51] 一般演題・口演51
コンピュータ

2019年3月1日(金) 17:50 〜 18:40 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:高木 俊介(公立大学法人横浜市立大学附属病院集中治療部)

[O51-6] 【優秀演題(口演)】機械学習手法を用いたICU患者のDIC進行度予測の時系列解析

園生 智弘1,2,3, 二宮 英樹4, 加藤 颯太5, 島田 敦1,2, 神田 直樹1, 奈良場 啓1,2, 高橋 雄治1, 橋本 英樹1, 中村 謙介1,2 (1.日立総合病院 救急集中治療科, 2.東京大学救急科学教室, 3.TXP Medical 株式会社, 4.株式会社データック, 5.東京大学医学部)

【背景】近年集中治療領域では、SOFAなど急性期スコアを用いた予後予測など、様々な未来予測の試みが行われている。しかしそれらの多くの研究ではある時点のデータを用いて、後方のある時点の予測をしているに過ぎない。一方で集中治療の現場では、患者の状態は刻一刻と変化する。病態が増悪傾向なのか、あるいは改善しているのか、あるいは増悪から改善に転じたのか、といった病態の動的解析が大切であるが、従来これらの動的解析は困難であった。本研究では動的解析の一環として直近3日間の時系列データを用いたDIC(血小板数)の進行予測モデルの構築を試みた。【方法】日立総合病院の集中治療室入室患者を対象とした。2017年2月7日-2018年8月1日の入室患者を対象とした。各患者について入院中毎日の血液検査データを用いて「急性期DIC診断基準」に基づくDIC scoreを計算し、最大値が1以上の患者を対象として選定した。モデルに投入した臨床的に妥当性の高い検査項目の欠損がある患者を除外した。これらの患者につき直近3日間のPTINR, APTT, PLT, FDP, WBC, BT, RR, PR, BTを説明変数として、Liner Regressionを用いて、翌日のPLTを予測するモデルを構築した。【結果】当該期間に476人のICU入室があった。DICスコアの基準を満たした81人の患者を対象として解析した。それらの対象患者について、血小板数予測モデルのR2 0.875, RMSE 3.74, MAE 2.46となった。標準偏回帰係数は高い順に、3日目の血小板、3日目のPT-INR、2日目のBTという結果であった。1日目、2日目の検査値・バイタルデータについては、実測値ではなく次の日との差分を説明変数にして、3日目の値は実測値を説明変数としたところ、R2 0.901とfittingの向上を認めた。【考察】3日間の時系列データを元にしてある程度精度の高い血小板数の変化予測が可能であった。今回はデータ量が限られている解析であったが、十分なデータ量があれば、疾患を例えば感染症に絞ることなどによりさらに精度の上昇が見込まれる。またよりダイナミックな解析として、状態が増悪から改善に変わる時点として、血小板の底値の予測等も可能と考える。特にデータ量の多いICUにおいては機械学習による各種予測モデル構築が今後期待される領域でもある。現場におけるデータのスムーズな取得とデータと解析技術の接点の作り方を含めて考察する。