[O52-1] Dynamic needle tip positioningを用いた小児患者の超音波ガイド下末梢静脈穿刺:ランダム化比較試験
【背景】小児患者の末梢静脈カテーテル挿入は容易でない。我々はこれまで、小児患者の末梢静脈カテーテル挿入の成功に影響する因子は超音波ガイドの使用と血管径であること、そして前腕近位部橈側皮静脈は血管径が太く、超音波ガイド下穿刺の成功率が高いことを報告してきた。しかし、血管径が細い場合には成功率は低い。近年、Dynamic needle tip positioning (DNTP)という手技が報告されている。超音波ガイド下に交差法で穿刺して針先が描出し、超音波プローブを遠位に動かして針先が画面から消えたところで再び針を進め、針が画面に現れたら再び超音波プローブを遠位に進めることを交互に繰り返し、針先が血管内に入って逆血が確認できた後も十分に外筒が血管内に入るまで後壁貫通をしないように進めてカニュレーションする手法である。【目的】小児の超音波ガイド下末梢静脈カテーテル挿入にDNTPを用いれば、針先の正確な描出が可能となり、血管径の細い患者でも成功率が上昇することを証明すること。【方法】研究デザイン:ランダム化比較試験集中治療室に入室し、末梢静脈カテーテル留置を必要とする2歳未満の患者60名を、DNTP群(30名)とCSA(Conventional short axis、従来の交差法を用いる)群(30名)の2群にランダム化した。両群共に、超音波ガイド下に前腕近位部の橈側皮静脈で末梢静脈カテーテル留置を行った。DNTP群では穿刺針内針が血管内に挿入されて逆血が確認できた後もDNTPを用いて針先を描出しながら外筒が血管内に挿入されるまで針を進めてカニュレーションした。CSA群では、逆血確認後は針先を追わずに、外筒と内筒の差の分を考慮して盲目的に針を進めてカニュレーションした。主要評価項目は初回穿刺成功率、副次評価項目は10分以内の最終成功率、穿刺時間とした。検定法はχ二乗検定、カプランマイヤーログランク検定を用い、P<0.05を有意とした。【結果】初回穿刺成功率は 86.7% (26/30) vs 60% (18/30) (P=0.02)、10分以内の最終成功率は90% (27/30) vs 63.3% (19/30) (P=0.015)であった。穿刺時間は51.5 (43-63)秒 vs 74.5 (45-600)秒 (P=0.01) であった。 【結論】DNTPを用いることにより、従来の交差法に比べて小児患者の超音波ガイド下末梢静脈カテーテル留置の成功率が上昇する。