[O52-2] 超音波診断装置を用いた大腿直筋断面積の測定によりICU-AWの評価を行った乳児2症例
【背景】重症乳児において、ICU-AW(ICU-acquired weakness)がしばしば問題となる。しかし、筋力測定のような努力に依存する検査は乳児では困難であり、ICU-AWの客観的な評価は難しい。我々は2例の先天性心疾患の乳児に対して周術期に大腿直筋の断面積を超音波診断装置で計測し、ICU-AWの評価を行った。【方法】大腿の中央部にプローベを垂直に当て、大腿直筋をトレースして断面積を計測した。【症例1】2か月の女児。大動脈離断症に対してNorwood型手術が予定されていた。術前は心不全の徴候はなく順調な体重増加が得られ、体重と有意な相関をもって大腿直筋断面積が増加した(R=0.91、p<0.001)。術後、開胸のまま小児集中治療室(PICU)に入室し、閉胸されるまで7日間、ロクロニウムの持続静注を含む深鎮静で管理された。この間、大腿直筋断面積は術前(0.87cm2)から約7割(0.64cm2)まで減少した。術後9日目に人工呼吸器のウィーニングを行ったが、著明な頻呼吸を認め、また咳嗽が弱く、ICU-AWと診断された。人工呼吸を継続し、術後14日目に抜管され、非侵襲的陽圧換気法(NPPV)管理に移行された。この間、大腿直筋断面積は緩徐に増加傾向を示していた。【症例2】4か月の女児。総動脈幹症に対して総動脈幹弁形成、Rastelli型手術が予定されていた。術前は左主気管支の狭窄に対してNPPV管理を受けていたが、心不全徴候はなく順調な体重増加が得られていた。体重と有意な相関をもって大腿直筋断面積が増加した(R=0.92、p=0.001)。術後PICUに入室し、4日目に問題なく抜管された。術後10日目に総動脈幹弁逆流に対して再手術となった。2度目の手術後も5日目に問題なく抜管された。残存する左主気管支の狭窄に対しNPPV管理は要したが、臨床的にICU-AWを疑う所見は認められなかった。この症例では周術期に大腿直筋断面積に明らかな変化はみられなかった。【結論】成人においては大腿直筋の断面積や径が筋力と相関することが報告されている。臨床的にICU-AWと診断された症例でのみ大腿直筋断面積の減少が認めらたことは、大腿直筋断面積の計測が乳児のICU-AWの定量的評価方法として有用である可能性を示唆している。人工呼吸離脱困難などのアウトカムとの関連は更なる研究が必要である。