第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

新生児・小児 症例

[O55] 一般演題・口演55
新生児・小児 症例02

2019年3月1日(金) 11:10 〜 11:50 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:松井 彦郎(東京大学医学部附属病院小児科)

[O55-1] 先天性心疾患の管理の過程で、肉眼的血便を契機に腸管病変を判断し得た小児患者2症例

早川 翔1, 高木 俊介2 (1.横浜市立大学附属 市民総合医療センター, 2.横浜市立大学附属病院)

集中治療管理中、肉眼的血便が認められる事がある。成人であれば原因検索にCT撮影や内視鏡検査を行う事ができるが、先天性心疾患の小児では難しい事がある。血便が一度のみで状態が安定していると、経過観察とする事もあるが、腸管病変が進行している可能性もある。今回、肉眼的血便が契機で腸管病変を判断し得た症例を2例経験したので、報告する。<症例1>【患者】出生26日目の女児【周産期歴】38週6日、経膣分娩、Apgar score 1分8点・5分9点、出生体重3130g【現病歴】RSウィルス感染による肺炎が契機となり、先天性心疾患(動脈管開存、大動脈縮窄症)の診断をされた患者。重症肺炎と心不全を合併しており、ICU入室後に人工呼吸器管理となった(Day0)。【経過】入室後より肺炎と急性心不全に対する治療を開始し、感染が落ち着いたところで先天性心疾患に対して外科的治療を行う方針となった。Day4に血混じりの便認めたが、その後の便の色・性状共に茶色・軟便であった為経過観察としていた。Day7腹部緊満と気道内圧の上昇認め、腹部病変を疑い側臥位でXp撮影したところ、free air認め、消化管穿孔と判断し、緊急手術となった。術中所見から虚血性腸炎の診断となり、単孔式人工肛門を造設した。状態安定した後、Day11に動脈管結紮術を行った。Day15に抜管し、Day17にICU退室となった。<症例2>【患者】1歳0ヶ月の女児【診断】22q11.2欠失症候群(B型大動脈離断合併)【現病歴】日齢5に両側肺動脈絞扼術、生後2ヶ月にNorwood+RVPA shuntの手術を受けており、今回、左右肺動脈形成術+導管交換術施行後にICU入室した(Day0)。【経過】Day5に39度の発熱認め、血球貪食症候群疑い免疫グロブリン投与開始し、Day8からステロイドパルス療法を開始した。症状落ち着いていたが、Day22に一部赤い便が認められた。便ヘモグロビン検査陽性、Hb低下認めたことからDay23に腹部CT撮影したところ、回腸から直腸まで連続する広範な腸管気腫を認めた。Day28気腫改善認めた為経管栄養を開始し、Day37抜管、Day43病棟へ退室となった。【考察】小児の血便は、様々な疾患が鑑別に挙がり、その疾患も時期により変化する。また先天性心疾患においては、解剖学的な血管走行の異常や術後を含めた循環動態の変化により虚血性病変になるリスクは高い。先天性心疾患の患者で、術後や循環動態が不安定の時に肉眼的血便が認められた際には特に注意が必要である。