[O55-4] 生後6か月未満の乳児に対する僧帽弁置換術―異なる術後経過をたどった2例―
【背景】小児における僧帽弁置換術(MVR)は使用可能な人工弁のサイズに制約があり,特に生後6か月未満のMVRは極めて予後不良である.当院では2017年に6か月未満の乳児2例に対するMVR後に異なる術後経過を辿ったため報告する.【臨床経過】[症例1] 不完全型房室中隔欠損症,重度左側房室弁逆流,肺高血圧の3か月男児.当初弁形成を行うも逆流が制御できず,術中に左房圧上昇から肺出血をきたし,MVR(ATS16mm)に変更.術直後から心収縮は不良で,術後7日目より不整脈が頻発し治療に難渋.次第に左室はEF37%,LVEDD30.2mm(147% of Normal)と拡張.拡張型心筋症様となり心不全治療を行うも改善なく,術後38日目に不整脈が再燃.循環維持できず術後46日に死亡.[症例2] 重度僧帽弁逆流&狭窄,肺高血圧,心室中隔欠損の4か月女児.カテーテル検査(Cath)で肺動脈楔入圧(PAWP)=21,肺動脈圧(PAP)=40,左室拡張末期圧(LVEDP)=10(mmHg), 左室拡張末期容量係数(LVEDVi)=38.2ml/m2(73.4% of Normal)だった. 二心室修復+僧帽弁形成(MVP)の予定で手術に臨むも術中所見よりMVPは不可と判断.弁輪径12mmと極めて小さく機械弁による置換は困難で,ウシ頸静脈導管(Contegra12mm)を用いたMVRを施行.術直後,MSの圧較差は4mmHgと良好だったが, 10-15mmHgへ急速に進行.また弁下組織でLV内腔が占拠されEDVが低下し低心拍出状態となった.術後2か月のCathはPAWP=15,PAP=25,LVEDP=9, LVEDVi=19.7 (40.1% of Normal),左室内に圧較差(35mmHg)だった. 術後49日目,ATS16mmでre-MVRを行ったが心房裂開などもありECMO装着下で帰室したが術後5日でwithdrawとなった.【結論】当院で過去15年間に行った二心室症例に対するMVR中,6か月未満の症例は本症例を含めて4例で,うち3例が術後60日以内に死亡していた.小児に使用可能なデバイスの制約の中で様々な工夫をしてはいるが,依然乳児の僧帽弁疾患に対するMVRは予後不良である.弁形態や心内構築異常,心室の容量を考慮し,心機能温存のため形成を試みずMVRを行うことや単心室修復も考慮に入れる必要がある.