第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

新生児・小児 症例

[O55] 一般演題・口演55
新生児・小児 症例02

Fri. Mar 1, 2019 11:10 AM - 11:50 AM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:松井 彦郎(東京大学医学部附属病院小児科)

[O55-5] 【優秀演題(口演)】重度の葉酸欠乏から呼吸不全を来した乳児の1例

山下 由理子1, 長井 勇樹1, 制野 勇介1, 青木 一憲1, 長谷川 智巳1, 黒澤 寛史1, 市川 貴之2, 石田 敏章2, 三木 康暢3, 田中 敏克3 (1.兵庫県立こども病院 小児集中治療科, 2.兵庫県立こども病院 血液・腫瘍内科, 3.兵庫県立こども病院 循環器内科)

【背景】葉酸は生体内のDNA合成や細胞分裂に関与している。慢性的に欠乏することで巨赤芽球性貧血になり、重症例では汎血球減少、続発性免疫不全症を呈することが知られている。特に、先天性葉酸吸収不全症では葉酸トランスポーター機能欠失による重度の低葉酸血症のため重症複合免疫不全症を呈し、致死的感染症を来すことが報告されている。我々は敗血症、呼吸不全に対して集中治療を要し、先天性葉酸吸収不全症と診断された乳児例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は生後2か月男児。2週間前から進行する咳嗽、嗜眠、嘔吐、哺乳不良を主訴に近医を受診し、呼吸窮迫症状と汎血球減少を指摘され当院集中治療室に搬送された。入室時から頻脈、頻呼吸、胸水貯留を呈し、血液検査で汎血球減少と免疫グロブリン低値を認めた。呼吸不全のため入室2日目に挿管、人工呼吸管理を開始した。病因として免疫不全に伴う重症感染症や血液腫瘍が疑われ抗菌薬投与を行なったが、各種培養や細菌・ウィルスPCR、βDグルカンは陰性であり原因微生物は特定できなかった。また、骨髄像は血液腫瘍を示唆する所見ではなく、巨赤芽球性貧血を示唆する所見であった。血中の葉酸は感度以下であり入室4日目から葉酸の経静脈的投与を開始した。徐々に呼吸状態が改善し入室8日目に抜管したが、翌日に胸水の再貯留と肺胞出血、心臓超音波検査で肺高血圧所見を認め、再度挿管、人工呼吸管理を行い、一酸化窒素吸入療法やミルリノン投与を開始した。また、膠原病による間質性肺炎や血管炎の可能性を考慮し、免疫グロブリン補充とステロイドパルス療法を追加した。入室15日目から汎血球減少は改善し、同時に呼吸状態、肺高血圧の改善を認め、入室17日目に人工呼吸器を離脱、入室22日目に集中治療室を退室した。後にSLC46A1遺伝子異常が判り、先天性葉酸吸収不全症と診断された。呼吸状態の再増悪の時期は血球回復と一致していたことから免疫再構築症候群による潜在的な感染症に対する免疫応答が原因となった可能性が考えられた。【結語】原因不明の血球減少、重症免疫不全、呼吸不全を発症した際に、葉酸欠乏症を鑑別に挙げる必要がある。