第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液浄化 研究

[O56] 一般演題・口演56
血液浄化 研究01

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:40 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:日高 正剛(大分大学医学部附属病院)

[O56-2] ER-ICUにおける尿中L-FABPを用いた急性腎不全における腎代替療法導入予測に関する検討

永井 淳, 淺井 英樹, 水本 領, 山本 幸治, 宮崎 敬太, 多田 祐介, 高野 啓佑, 川井 廉之, 福島 英賢 (奈良県立医科大学附属病院 救命救急センター)

【目的】既往歴が不明な症例が多い救急ICU(以下ER-ICU)において、血清クレアチニンと尿量でAKIを診断する現行のKDIGO分類では診断までに長時間を要し、AKIへの治療介入が遅れることがある。我々は、尿細管壊死の鋭敏なバイオマーカーとして近年注目されている尿中L-FABPを用いて、ICU入室早期にAKIを拾い上げることが可能か検討した。【方法】平成30年5月から7月に当院ICUに入室した18歳以上の男女13人のICU入室時の随時尿を採取してL-FABPキット(POCキット、CIMIC社)を用いて定性し、また入室時・入室3時間後のL-FABP濃度を測定した。入室時のL-FABPキット陽性例と陰性例の2群に分けて後方視的に比較検討した。【結果/考察】全例生存退院したが、そのうち入室時にL-FABP陽性となったものは7例であった。入室時L-FABP陽性7例のうち4例はAKIと診断され、そのうちCRRTが必要であったのは2例であった。一方、入室時L-FABP陰性は6例でうち1例がAKIと診断された。入室時のL-FABPキットでのAKI診断の感度は83%で特異度は71%であった。L-FABP陽性でAKIと診断され、CRRTが必要であった2例のL-FABP濃度は3時間後に上昇しており(105.9ng/ml→4050.2 ng/ml、1816.9 ng/ml→3770.6 ng/ml)、AKIと診断されたがCRRTが不要であった2例では、3時間後のL-FABP値は入室時よりも低下していた。入室3時間後のL-FABP濃度の上昇は、CRRTの導入を示唆すると考えられた。また、CRRT導入の予測はL-FABPキットを用いた半定量でも可能であった。【結論】尿L-FABPはICU入室時のクレアチニン値によらず、入室時が陰性であればAKIへ進展せずCRRTの導入は必要ではないが、入室時に陽性である場合にはその入室時から3時間後への推移により、高リスク患者を的確に拾い上げることができ、早期のCRRT導入によって過剰輸液とそれによるMODSを回避し得る可能性がある。