[O57-1] クリアランスを確認しつつ長時間の血液吸着療法を行ったメトトレキサート中毒の3歳児例
【背景】メトトレキサート(MTX)大量療法後のMTX中毒に対して、血液透析や血液吸着(DHP)、血漿交換などの血液浄化法の有用性が報告されており、1回のDHPは、4時間程度で行われることが多い。われわれは24時間のDHPを行ったので報告する。【症例】急性リンパ性白血病を加療中の3歳11か月女児(体重12.9kg)。high-dose MTX(5g/kg)を投与され、翌日に意識変容と腹痛、急性腎障害(BUN 20.3mg/dL、Cre 1.14mg/dL)認め、MTX24時間値が 281.8μmol/Lと高値であったためメトトレキサート中毒の診断でICU入室となった。血液流量(Qb)60ml/minで4時間DHP(ヘモソーバCHS)を行い、終了時のMTX値 67.9μmol/Lで除去率72%であった。DHPのMTXのクリアランス:Qb×(カラム前の血中濃度-カラム後の血中濃度)/カラム前の血中濃度は、開始1時間の時点で58.2ml/min、4時間の時点で54.0ml/minであった。一回目の吸着療法終了後からQb60ml/min、透析液流量(Qd)3600ml/hの持続血液透析(CHD)を行い、6時間経過した時点で、MTX値86.9μmol/Lとリバウンドを認めた。CHDのクリアランスは、18.2ml/minであった。リバウンドに対して2回目のDHPを8時間行い、除去率は88%、8時間経過時のクリアランスは55.1ml/minと高値であった。翌日にリバウンドを認めたため、3回目のDHPを実施。24時間行い、16時間経過時点でのクリアランスは、48.9ml/minと高く保たれていた。DHP実施の延長に際して、明らかな有害事象は認めなかった。上記経過のDHP中は腎代替療法として直列でCHDをQd500ml/hで併用した。【結論】小児のMTX中毒に対してDHPを行い、8時間、16時間経過時においてもクリアランスが高く維持され、有害事象を認めなかった。クリアランスを確認しつつDHPを長時間行うことは、MTXの血中濃度を低く維持することで急性腎障害を含む副作用の軽減と医療費の削減に、有用である可能性が示唆された。また今回得られたクリアランスからDHPはMTXの蛋白結合率50%で制限されるHDと比較して有利である可能性が示唆された。