[O57-3] 腫瘍崩壊症候群予防のために血液浄化療法を併用して化学療法を導入した急性骨髄性白血病の1症例
【背景】腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome;TLS)は悪性腫瘍に対する治療導入時に発症し,電解質異常や高尿酸血症を呈する.重症例では急性腎障害(AKI)や,電解質異常に伴う不整脈,けいれんなどの生命を脅かす病態を引き起こす.急性白血病や腎機能低下,LDH高値などはTLS重症化のリスク因子である.今回, 急性骨髄性白血病(AML)に播種性血管内凝固(DIC)とAKIを合併しTLSのリスクが高い症例に対し,血液腫瘍内科と集中治療部が連携して化学療法を安全に導入できた症例を報告する.
【臨床経過】20歳台男性.心窩部痛と嘔気を主訴に受診した前医の採血で白血球増多と血液凝固能異常を指摘され,DIC合併AMLが疑われ当院搬送となった.来院時,体温38.4℃,呼吸数29 /min, 血圧 150/76 mmHg, 心拍数 124 bpmであり,血液検査では白血球 63990/μL (Blastoid 60%),Hb 6.3 g/dL,血小板36000/μL,LDH 4756 U/Lであった.旧厚生省DIC診断基準11点,Cre 5.32 mg/dLとDIC,AKIを合併したAMLと判断し,集中治療室入室とした.持続的血液濾過透析(CHDF)を開始したが,血液凝固能異常に起因する血栓傾向のため回路閉塞を繰り返した.化学療法に関しては血液腫瘍内科で開始時期を検討し, TLSの高リスク患者であるため集中治療室で血液浄化療法を施行しながらCAG療法を導入する方針となった.AMLに伴う高サイトカイン血症とAKIに対して,第3病日から低分子ヘパリンを使用して血液濾過透析(HDF)を施行した.化学療法は第4病日から開始し,HDF回路には問題なく経過した.両側胸水貯留に伴う低酸素血症に対しては左胸腔ドレナージを施行し,非侵襲的陽圧換気(NPPV)を導入とした.第6病日CAG療法 day3には腫瘍崩壊のpeakであったと考えられるが,HDFにより血清カリウム値上昇は4.8 mmol/Lまでに抑えられ, TLSには至らなかった.第8病日にはNPPVを離脱,腎機能も改善したため連日施行していたHDFは終了とした.第10病日,酸素化改善と腎機能正常化を確認し,一般病棟へ転棟した.
【結論】TLSは重症化すると生命を脅かす.化学療法導入により重篤なTLS発症が考えられる場合には,血液浄化療法を併用することで致死的合併症のリスク低減が可能である.白血球数やLDHからTLSのリスクを予測し,高リスクであっても血液浄化療法を併用することで安全な化学療法の導入が可能であると考える.
【臨床経過】20歳台男性.心窩部痛と嘔気を主訴に受診した前医の採血で白血球増多と血液凝固能異常を指摘され,DIC合併AMLが疑われ当院搬送となった.来院時,体温38.4℃,呼吸数29 /min, 血圧 150/76 mmHg, 心拍数 124 bpmであり,血液検査では白血球 63990/μL (Blastoid 60%),Hb 6.3 g/dL,血小板36000/μL,LDH 4756 U/Lであった.旧厚生省DIC診断基準11点,Cre 5.32 mg/dLとDIC,AKIを合併したAMLと判断し,集中治療室入室とした.持続的血液濾過透析(CHDF)を開始したが,血液凝固能異常に起因する血栓傾向のため回路閉塞を繰り返した.化学療法に関しては血液腫瘍内科で開始時期を検討し, TLSの高リスク患者であるため集中治療室で血液浄化療法を施行しながらCAG療法を導入する方針となった.AMLに伴う高サイトカイン血症とAKIに対して,第3病日から低分子ヘパリンを使用して血液濾過透析(HDF)を施行した.化学療法は第4病日から開始し,HDF回路には問題なく経過した.両側胸水貯留に伴う低酸素血症に対しては左胸腔ドレナージを施行し,非侵襲的陽圧換気(NPPV)を導入とした.第6病日CAG療法 day3には腫瘍崩壊のpeakであったと考えられるが,HDFにより血清カリウム値上昇は4.8 mmol/Lまでに抑えられ, TLSには至らなかった.第8病日にはNPPVを離脱,腎機能も改善したため連日施行していたHDFは終了とした.第10病日,酸素化改善と腎機能正常化を確認し,一般病棟へ転棟した.
【結論】TLSは重症化すると生命を脅かす.化学療法導入により重篤なTLS発症が考えられる場合には,血液浄化療法を併用することで致死的合併症のリスク低減が可能である.白血球数やLDHからTLSのリスクを予測し,高リスクであっても血液浄化療法を併用することで安全な化学療法の導入が可能であると考える.