[O57-5] 大腿Vascular Access留置中患者において早期リハビリテーション直後に発症した凝固障害:症例報告
【背景】Intensive Care Unit (ICU)において術後早期リハビリテーションが推奨されている。慢性腎不全 (CKD)がある患者の開心術中の透析に用いたVascular Access (VA)を留置したまま入室する場合があるが、大腿VA留置中の患者で安全にリハビリテーションが行えるかは不明である。今回、大腿VA中の早期リハビリテーション後に発症した凝固障害という稀な有害事象を2例経験したので報告する。【case1臨床経過】CKDがあり透析導入直前の62歳女性。3枝病変に対し冠動脈バイパス術施行、術中に左大腿にVA留置し透析施行しICU入室した。入室13時間後のAPTTは40.8秒で20時間後にVAをヘパリン4000単位でロックした。21時間後に離床し100m歩行、22時間後にAPTT145.7秒と延長した。有害事象ないため経過観察し24時間後にAPTT62.5秒と改善した。術後6日目にICU退室し、術後21日目に生存退院した。【case2臨床経過】 狭心症、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、CKDの既往ある72歳男性。胸部大動脈瘤、3枝病変に対し、頸部分枝再建術、及び冠動脈バイパス術を施行、術中右大腿にVA留置し透析を行いICU入室した。入室22.5時間後にVAをヘパリンロックし、36時間後のAPTTは40.5秒であった。39.5時間後に離床し200m歩行した所、VAのルート内に血液の逆流を認めた。40時間後に再度ヘパリンロックし、その後200m歩行した所、再度VAのルート内に逆血がみられ、VA刺入部から出血した。APTT測定したところ180秒以上と延長を認めた。歩行によりVAルート内のヘパリンが血液と置換されたことが原因と考えた。VA刺入部からの軽度出血合併したためプロタミン硫酸塩50mgで拮抗し51時間後にはAPTT62.9秒に改善した。その後は有害事象なく経過し術後5日目にICU退室、術後10日目で生存退院した。【考察】凝固延長の原因として、歩行動作により大腿VAルート内のヘパリンが血中に流入しAPTT延長をきたした可能性があった。当科ではルートロックを1000単位/ml組成のヘパリンで行っているが、ルート閉塞の予防方法にも検討の余地があると考えられた。【結論】 今回我々は大腿VA留置中患者が早期リハビリテーション後にAPTT延長をきたすという稀な有害事象を経験した。大腿VA留置中の凝固障害では今回のような有害事象も鑑別となるかもしれない。