第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

中枢神経

[O58] 一般演題・口演58
中枢神経01

Fri. Mar 1, 2019 3:40 PM - 4:30 PM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:森本 裕二(北海道大学病院麻酔科)

[O58-1] 心機能低下をきたし経皮的心肺補助装置を導入して救命した悪性症候群の1例

山長 修1, 高松 純平2 (1.兵庫県立尼崎総合医療センター 麻酔科, 2.関西労災病院 救急重症治療部)

【背景】悪性症候群は、抗精神病薬を服用中の患者が高体温、意識障害、錐体外路症状、自律神経症状などの多彩な症状を呈し、適切な処置を行わなければ重篤化し、生命の危険がある疾患である。今回、心機能低下をきたし、経皮的心配補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)を導入して救命した悪性症候群の1例を経験したので報告する。
【臨床経過】症例:66歳、女性。主訴:発熱、意識レベル低下。現病歴:34歳時より統合失調症の診断にて加療されており、64歳時より前医入院中であった。入院2日前より発熱を認め、入院当日に40℃を超える発熱と意識レベルの低下を認めたため、当院に転院搬送となった。入院時現症:意識レベルはJCS200、血圧110/64mmHg、脈拍97/分、体温41.2℃、呼吸数30回/分、SpO294%(O210L/min)であった。入院時検査所見:血小板低下と凝固機能障害、肝機能障害、腎機能障害とプロカルシトニン、CRP、CPKの上昇を認めた。経過:搬送時より酸素化不良と意識レベル低下認めたため気管挿管を施行し人工呼吸管理を開始。開始後より血圧が低下し、補液とノルアドレナリン持続投与も開始した。胸部CTにて肺炎像認められため、脱水による横紋筋融解症と肺炎による敗血症性ショックの診断にてICUに入室し抗生剤投与を開始した。その後も血圧低値は継続し、バソプレシン投与するも改善は見られず、経胸壁心臓超音波にて全周性の左室壁運動低下を認めたため、ドブタミン塩酸塩を追加するも心室頻拍が出現し循環維持が困難となったためPCPSを導入したところ循環維持が可能となった。その後尿量低下認めたため持続的血液濾過透析(Continuous hemodiafiltration;CHDF)を開始、さらに後負荷軽減目的に大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping;IABP)を導入した。その後心機能は徐々に改善を認め、ICU入室4日目にPCPSを離脱、5日目にIABPを離脱したが、8日目に解熱剤にても改善しない40℃の発熱、脈拍数および呼吸数の上昇、CPKの再上昇が見られたため、悪性症候群と診断。ダントロレンナトリウム水和物の投与を開始したところ解熱し、CPKの低下を認めた。その後全身状態は改善傾向にあり、26日目にはCHDFを離脱、40日目には人工呼吸器を離脱し、42日目に一般病棟へ転棟した。
【結論】悪性症候群の重症例では重度の心機能障害を合併することがあり、適切な治療を行う必要がある。