[O59-2] 特発性脊髄硬膜外血種の臨床的特徴と予後
【背景】特発性脊髄硬膜外血種は、神経学的に緊急を要する比較的まれな疾患である。しかし、疼痛や麻痺の程度および分布は多彩であり診断に苦慮することも多い。【目的】本研究は、本疾患の急性期の臨床像、血液検査より手術症例や神経学的予後と関連する因子がないかを検討する。【方法】対象は2009年12月から2018年7月までの期間で当救命救急センターを受診し入院となった症例とした。外傷、硬膜外穿刺、手術などに続発した症例は除外した。特発性脊髄硬膜外血種の確定診断は、放射線科医と脳外科医、整形外科医によりMagnetic Resonance Imaging (以下、MRI)で診断した。入院診療録を後方視的に患者背景、臨床症状、血液検査、画像所見、治療(手術、保存)、退院/転院時modified Rankin Scale(以下、mRS)について調査した。手術症例と非手術症例の比較や予後良好群(mRS 0-1)とそうでない群(mRS>1)の比較検討をおこなった。【結果】最終対象症例は26症例で、男性16人(61%)、年齢は69(62-76)歳、抗血小板薬・抗凝固薬を内服している患者は10症例であった。緊急手術は9症例(35%)で抗血小板薬・抗凝固薬を内服している患者は3症例であった。疼痛発症より手術までに要した時間は712(530-787)分であった。脊髄硬膜外血種はC4レベルが最も多かった。他院からの紹介症例は16症例(61%)であった。退院時mRS 0-1は18症例(69%)であった。手術群にておいて、非手術群よりD-dimerが0.7±0.1μg/ml(p=0.02)と低値で、退院時のmRSは2(1-3)(p=0.008)と高値であった。mRS>1群では、mRS 0-1 群と比較して抗凝固薬を内服している症例が4症例(50%)(p=0.004)と多く、PTINR1.03(0.98-1.75)(p=0.02)と延長していた。さらにmRS>1群では手術症例が6症例(75%)(p=0.007)と多く、病院入院日数が23(18-28)日(p=0.01)と延長していた。【結論】特発性脊髄硬膜外血種は、約9年間で26症例、そのうち手術症例は35%であった。抗凝固薬内服かつ緊急手術となった症例は神経学的予後が悪い可能性がある。