[O59-3] 入院後に麻痺を認め、緊急で血腫除去術を施行し良好な経過をたどった特発性脊髄硬膜外血腫の1例
特発性脊髄硬膜外血腫は比較的稀な症例であり、神経学的所見が乏しい場合、診断に難渋する。来院時に神経学的所見が乏しく、入院後に麻痺が出現し緊急で血腫除去術を行い、良好な経過を辿った症例を経験したので報告する。70歳女性、身長157cm、体重40kg。既往歴として高血圧症を認めた。体動時の突然の腰痛にて救急要請となった。来院時、意識清明、血圧176/93 mmHg、心拍数120 bpm、 SpO2 100%、呼吸数20回/分であった。第2腰椎の右傍脊柱筋付近の圧痛を認めたが、下肢の明らかな麻痺は認められなかった。疼痛はNRS9-10であったため、ジクロフェナク座薬25mg挿肛およびアセトアミノフェン600mg静注を施行し、NRS5程度に改善した。疼痛管理および精査目的で入院した。入院後、疼痛は緩和されてきたが、翌日下肢の筋力低下が出現した。MRIを施行したところ、第10胸椎-第1腰椎に血腫を疑う所見が認められた。下肢MMTは軽度低下を認め、知覚は臍下部で軽度感覚鈍麻を認めた。緊急で血腫除去術を施行したところ、術後麻痺は改善した。特発性脊髄硬膜外血腫は麻痺が出現した場合、早期に外科的介入を行わないと神経学的予後が不良となることがある。今回の症例では来院時に神経学的所見がはっきりせず、入院後に明らかな神経学的所見が出現した。MRIを施行したところ明らかな血腫を認めたため、緊急で血腫除去術を行った。特発性脊髄硬膜外血腫では疼痛のみで麻痺などの神経学的所見を認めない症例もある。そのため単なる急性腰痛症と診断されてしまうこともあるが、MRIにて容易に診断することが可能である。疼痛のみの腰痛症であっても、特発性硬膜外血腫を念頭においてMRIを施行するか、十分な経過観察が必要だと考えられた。