[O59-4] 遅発性脳虚血を合併した外傷性くも膜下出血後にParoxysmal sympathetic hyperactivityを呈した小児の1例
【背景】Paroxysmal sympathetic hyperactivity(PSH)は重篤な脳損傷後に発作性に交感神経が過亢進となる状態である。PSHは頭部外傷後7-33%にみられると報告されているが本邦における認知度は低い。Delayed cerebral infarction(DCI)を合併した外傷性くも膜下出血後にPSHを呈した小児の1例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は生来健康な8歳女児。歩行中に普通自動車と衝突し当院救命センターに搬送された。搬入時はショックで意識レベルはGCS:E1V3M6であった。FASTはモリソン窩とダグラス窩で陽性で、Pan scan CTで外傷性くも膜下出血、縦隔血腫、上腸間膜動脈仮性動脈瘤、横行結腸穿孔、右橈骨遠位端骨折が指摘された。ISSは41であった。気管挿管、ICPセンサーを挿入し開腹で人工肛門造設術を行った。ICP、CCPの管理は良好であったが第9病日急激な意識レベルの低下をきたし痙攣した。頭部MRIで広範な脳虚血と重度の血管攣縮が指摘されDCIと診断した。緊急で頭蓋内血管形成術を行ったが脳浮腫が進行したため、第11病日に外減圧を行った。その後は全身状態は安定し意識レベルはE4V1M4となった。第30病日頃から発熱が見られ、同時に数分の経過で頻脈、過呼吸、著明な発汗等の交感神経亢進症状、筋強直の悪化が繰り返された。これらの症状は痛み刺激や体位変換で誘発された。炎症反応の上昇はなく、各種培養、脳波検査より細菌感染や非痙攣性てんかんは否定的であった。経過から鎮静薬の離脱症状や悪性症候群は否定的でありPSHと診断しガバペンチンの内服を開始した。内服開始後は速やかに解熱し、交換神経亢進症状も消失した。今後はリハビリ転院予定である。【結論】PSHは早期治療により転帰を改善させられる可能性がある。しかし本邦での認知度は低く多数の患者が見逃されている。重篤な脳損傷後に交感神経亢進症状を伴った発熱を認めた時には積極的にPSHを疑い治療を行う必要がある。