[O6-5] 危機的産科出血に対して集学的アプローチにより救命し得た羊水塞栓症の一例
【症例】41歳女性、5回経妊3回経産【現病歴】近医にて妊娠41週6日で分娩誘発を開始され、胎児心拍異常にて緊急帝王切開術を実施した。術中より出血過多を認め、産科DICの疑いで当院へ転院搬送となった。【経過】来院時、JCS 100、脈拍140回/分、血圧60mmHg台とショック状態を呈し、Hb 4.3g/dl、フィブリノーゲン値25mg/dlであった。直ちに人工呼吸管理と大量輸液/輸血を開始するも反応が乏しく、REBOA(Resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta)を挿入した。一時的な血圧の安定化を得た後に、出血源の制御を目的として子宮摘出術を施行。なおも出血傾向が持続するため、ダメージコントロール戦略として骨盤内ガーゼパッキングとOAM(open abdomen management)を行い、ICUに入室した。術後はFFPを中心とした大量輸血を行うも凝固能の破綻が著しく、循環動態も依然不安定であったためrVII製剤を投与(90μg/kg)し、さらに計3回の追加投与を行った。以降より徐々に循環動態の安定化が得られ、輸血必要量も減じた。周術期の総輸血量はRCC 130単位、FFP 130単位、PC 260単位であった。第5病日に定型的閉腹術を行い、第15病日に抜管した。後に亜鉛コプロポルフィリンおよびSTN抗原高値の結果を得て、羊水塞栓症と確定診断した。【考察】羊水塞栓症は産科領域において未だに高い死亡率を示す重症病態であり、特に危機的出血に対する治療戦略は予後を左右する。出血のコントロールには、大量輸血は基より、REBOAやrVII製剤投与などを組み合わせた集学的なアプローチが有用である。