[O6-6] 母体救命において当院産婦人科と救急科が連携した症例の検討
【背景】母体救命における産科医と関係各科・部門との連携については近年の教育コースでその重要性が強調されている。しかしながら連携体制の構築は容易ではなく、施設や地域による差も大きいのが現状である。当院は2017年に埼玉県内2か所目の総合母子周産期医療センターを、隣接する埼玉県立小児医療センターと合同で設置した。運営においては、救急・集中治療を担当する救急科がバックアップすることとした。【目的】母体救命医療において救急・集中治療医が関与した症例を通じて、連携の意義を確認し、連携方法の確立過程を検証する。【方法】総合母子周産期医療センターを設置した2017年1月から2018年8月までの期間(20か月)に当院で診療した産科症例のうち、救急科医師が関与した42例について後方視的に検討した。【結果】母体年齢19-41歳(平均32.7歳)、ショックを呈した32例のショックインデックスは平均1.26であった。非産科疾患は外傷の4例でいずれも妊娠継続への支障はなかった。超緊急帝王切開を要したのは6例で、内訳は胎盤早期剥離4例、前置胎盤1例、子癇1例であった。産褥出血23例の出血理由は弛緩出血8、子宮仮性動脈瘤破裂7、軟産道損傷4、胎盤遺残2、その他2であった。分娩に関係しないものでは、異所性妊娠によるショック4例、卵巣出血2例、妊娠中絶後トキシックショック症候群1例、卵管留膿腫による敗血症1例であった。なお、死戦期帝王切開は0例であった。産褥出血23例の止血方法は選択的動脈塞栓術13例、子宮全摘出術2例、産道修復術3例、保存的止血5例であった。ドクターカー対応は4例、うち1例は産科医師が同乗した。救急科主科入院31例、うちICU入室27例、ICU滞在日数は平均2.3日であり、全例で生存・独歩退院となった。産科覚知が31例で、救急科覚知11例、事前に母体救命医療の必要性をいずれかで認識可能であった転院搬送・救急搬送21例のうち、当院到着前に情報共有があったのは13例(62%)であった。情報共有率は、期間の後期ほど高まる傾向となり、開設後5か月以降は子宮摘出を回避することができている。【結論】母体救命において、覚知後に迅速に情報共有し、止血・麻酔・集中治療に関わるチームを起動することが妊孕性維持を含めた予後改善のために必要である。