第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

新生児・小児 研究

[O60] 一般演題・口演60
新生児・小児 研究03

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:稲田 雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター集中治療科)

[O60-1] 小児病院における心臓手術後乳び胸 発症頻度と治療の実態

濱本 学1, 谷 昌憲1, 宮本 大輔1, 林 拓也1, 植田 育也1, 野村 耕司2 (1.埼玉県立小児医療センター 小児救命救急センター, 2.埼玉県立小児医療センター 心臓血管外科)

【背景】乳び胸は小児心臓手術後の重要な合併症の一つである。内科的治療は絶食、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)ミルク、オクトレオチドの使用などが知られているが国内の報告は少なく、エビデンスを伴う治療指針は確立されていない。
【目的】当院の心臓手術後乳び胸の発症頻度や治療の実態、治療への反応性を明らかにすること。
【対象・方法】対象:2017年1月1日から2018年7月31日までの19ヶ月間に心臓手術後管理目的にPICU入室した患者のうち、乳び胸と診断された症例。研究デザイン:診療録を基にした後方視的観察研究。
【結果】心臓手術後管理目的に入室した患者は230例であり、乳び胸と診断されたのは19例(8.3%)であった。原疾患は房室中隔欠損症が5例と最も多く、次いでファロー四徴症4例、総肺動脈還流異常症3例であった。基礎疾患は染色体異常が9例(47.3%)で、そのうち8例が21 trisomyであった。
初期治療として全例がMCTミルクへ変更し、8例は追加治療なく改善した。追加治療として絶食は10例、オクトレオチドは8例で導入された。1例は内科的治療に反応せず静脈リンパ管吻合術を行った。MCTミルクのみで改善した群と追加治療を要した群を比較すると、前群は経過中の最大一日胸水量が少なく(15±8.7ml/kg/day vs 76±70ml/kg/day, P=0.016)、術前からの体重減少率が小さかった(4.3±2.8% vs 13±8.2%, P=0.0084)。
オクトレオチド8例のうち、奏功例は2例であった。奏功例と無効例を比較すると統計学的な有意差は認めなかったが、奏功例の方が手術時体重が重く(6.2±3.7kg vs 2.8±1.0kg, P=0.08)、手術時月齢が高く(6.5±9.2か月 vs 0.4±0.9か月、P=0.142)、最大一日胸水量が少ない(35±23ml/kg/day vs 120±77ml/kg/day, P=0.199)傾向を認めた。
【結論】小児の心臓手術後の乳び胸に対して、半数以上がMCTミルク変更後も追加治療を要した。大量胸水が見られない症例ではMCTミルクのみでの改善が見込める可能性が示唆された。