第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

検査法・モニタリング

[O61] 一般演題・口演61
検査法・モニタリング01

2019年3月1日(金) 14:50 〜 15:40 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:小竹 良文(東邦大学医療センター大橋病院麻酔科)

[O61-5] MIMIC IIIにおける乳酸スロープによる重症患者の転帰予測

遠藤 裕1,2, 上村 夏夫1, 間 崇1, 本多 忠幸1, 清水 大喜2, 本田 博之2, 新田 正和1, 星野 芳文1 (1.新潟大学医歯学総合病院高度救命救急センター, 2.新潟大学医歯学総合病院集中治療部)

【背景】MIMIC(Medical Information Mart for Intensive Care )III は米国Beth Israel Deaconess Medical Center が提供するICUの公開データベースである。我々は、前回の救急医学会総会において、MIMICIIIを用いて、敗血症患者の転帰予測における乳酸クリアランス(LC)の有用性を報告した。【目的】MIMIC IIIを用いて、重症患者におけるICU入室後の乳酸値の直線回帰の傾斜(乳酸スロープ:LS)の転帰予測の有用性について検討した。【方法】MIMIC III(Ver.1.4)において、ICUに半日以上入室した16歳以上を対象とし、ICU入室1時間前~入室12時間の乳酸値から、LCとLSを算出した。【結果】1442名(生存退院1066例と院内死亡376例)が対象となった。院内生存の有無で比較すると、APACHE III、SAPS II、SOFA1st day、入室初期最高乳酸値、入室初期最高乳酸値(>3、>4、>5、>6mmmol/L)、入室6時間LC、入室6時間%LC(<30%、<20%、<10%)に有意な違いを認めた(Mann-Whitney U test、いずれもP<0.01)。一方、入室6時間及び12時間のLSは、それぞれ、生存例-0.23 ± 1.34、-0.16 ± 0.26、死亡例-0.06 ± 0.82、-0.04 ± 0.41 mmol/hour (平均± 標準偏差)で、こちらも有意差を認めた(いずれもP<0.01)。上記の乳酸に関する指標に関して、病院死亡に対する多変量ロジスティック回帰解析では、初期最高乳酸値と入室12時間LSが有意な予測因子となった(それぞれOR=1.37及び4.51、いずれもP<0.01)。更に、ICU重症度スコアを加えた多変量ロジスティック回帰解析では、APACHE III、SAPS II、初期最高乳酸値、12時間LSが有意な予測因子となった(それぞれOR=1.01、1.04、1.35、4.90、いずれもP<0.01)。一方、ROC曲線のAUCは、SAPSII 0.784>APACHE III 0.780>初期最高乳酸値 0.660>12時間LS 0.604となった (いずれもP<0.01)。 【結論】以上から、重症患者において、LCよりもLSは有用な転帰予測の指標となりうることが示唆された。