第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

検査法・モニタリング

[O62] 一般演題・口演62
検査法・モニタリング02

2019年3月1日(金) 15:40 〜 16:30 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:野﨑 歩(社会福祉法人京都社会事業財団京都桂病院薬剤科)

[O62-1] tNIRS-1を用いた開心術施行患者の脳組織酸素飽和度と推定Hb値に対するBIS値と採血Hb値の比較検討

杉浦 敦1, 鳥居 一喜1, 堤 博志1, 染谷 忠道1, 安岡 大資1, 錦織 恒太1, 北原 大1, 田中 光1, 柿沼 浩1, 南渕 明宏2 (1.昭和大学 横浜市北部病院 臨床工学室, 2.昭和大学 横浜市北部病院 循環器センター 心臓血管外科)

【背景】これまでBIS(Bispectral index)モニタは麻酔深度および鎮静度を表す指標として、多くの開心術症例に適用されてきた。また、今日においてはその値と近赤外線分光法(NIRS:Near-Infrared Spectroscopy)の測定値を比較し、脳虚血状態の把握にも有用であるとの報告がなされている。しかしながら、これまでの報告におけるNIRSの測定値は初期値をゼロ点とした相対値による濃度変化を示してはいたが、絶対値による濃度変化は測定されておらず、BISとの比較も相対変化に限られていた。そのため、実際にどの程度の虚血(ヘモグロビン濃度の低下)状態にあるかをNIRSの測定値から推定することは困難であった。また、術中のヘモグロビン濃度は間歇的測定しか行えず、その経時的変化を評価することは困難であった。【目的】本研究では、開心術施行患者の左右前額部にセンサを貼り付け脳組織酸素飽和度(StO2)の変化およびヘモグロビン濃度(Hb)の推定値が算出可能となるtNIRS-1に対し、脳組織酸素飽和度とBIS値の変化に相関があるか比較検討するとともに、tNIRS-1で算出したHb値と血液ガス分析装置により測定したHb値の変化についても相関があるか比較検討することを目的とした。【方法】当施設において大血管症例を除く開心術を受けた成人患者10名(人工心肺使用群(On群)、および人工心肺不使用群(Off群))を対象とした。各患者ともtNIRS-1とBISのセンサを前額部に貼り付けて同時モニタし、その変化量に相関があるか比較検討した。また手術開始前、手術中30分毎、手術後にそれぞれ採血を行い、血液ガス分析装置(可視吸光分光法)による測定を実施し、得られたHb値およびtNIRS-1による推定Hb値を比較検討した。【結果】tNIRS-1によるStO2値とBIS値の比較では、On群において最大r=0.617、Off群で最大r=0.555の有意な相関を示した。また、tNIRS-1による推定Hb値と血液ガス分析装置による測定値の比較では、On群において最大r=0.946、Off群で最大r=0.974の強い相関を示した。【結論】開心術症例の患者に対し、tNIRS-1で測定した脳組織酸素飽和度とBIS値の変化に有意な相関を認めた。またtNIRS-1で算出したHb値と血液ガス分析装置により測定したHb値の変化に強い相関を認め、その経時的変化の評価にも有用であることが示唆された。