第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

リハビリテーション

[O64] 一般演題・口演64
リハビリテーション01

Fri. Mar 1, 2019 9:15 AM - 10:05 AM 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:橋本 圭司(出雲徳洲会病院 麻酔科)

[O64-6] 咬合不全はICU患者のADL低下とせん妄発症を引き起こす

藤浪 好寿1, 井上 茂亮2, 黒田 泰弘1, 絹笠 紗耶香1, 岡崎 智哉1, 切詰 和孝1, 篠原 奈都代1, 宍戸 肇1, 高野 耕志郎1, 河北 賢哉1 (1.香川大学医学部附属病院 救命救急センター, 2.神戸大学医学部付属病院 先進救命救急医学部門)

【背景】口腔機能は全身機能に大きく関与する.近年ICUでは高齢者を中心に歯牙欠損や義歯の不適切使用などの咬合不全が散見されるが、患者自身のみならず救急・集中治療スタッフも咬合不全を見逃していることが多い.また咬合不全がICU入院患者の予後に与える影響は検討されていない.【目的】咬合不全がICU入院患者の生命予後・ADL・せん妄発症における影響を明らかにする.【方法】単施設コホート研究であり2017年11月1日から2018年3月31日に当院ICUに入院した18歳以上の220例を対象とした.48時間以内の死亡・軽快退院症例、治療撤退症例、入院時より高度の意識障害や認知機能低下があるものを除外した.咬合状況は両側臼歯咬合をもって健常群とし、義歯使用により両側咬合があれば義歯群、両側咬合がなければOral Frail群とした.主要評価項目は1.入院中死亡2.ADL低下3.せん妄発症率とした.ADL低下は入院前後のFrailty Scaleで2以上の上昇とした.せん妄は14病日までCAM-ICUにより評価した.生命予後・ADL/せん妄発症率をアウトカムとし、咬合不全の臨床的意義を単変量・多変量解析で検討した.2変量解析にはt検定またはMann-Whitney U検定を用い、名義カテゴリにおいてはFisher正確検定、3群比較にはカイ二乗検定を用いた.多変量解析ではロジスティック回帰分析を用いた.解析はJMP Ver13を使用した.すべて検定は両側検定でp値0.05未満を有意と判断した.【結果】1.対象220例のうち生存206例、死亡14例であり、Oral Frail群でもっとも高い死亡率を認めた(Oral Frail群21.7%、義歯群7.5%、健常群2.6%).2.54例でADL低下を認め、ADL低下群は年齢、入院時Frailty Scale、脳神経疾患の割合、APACHEスコアおよび咬合不全の割合がADL維持群と比較して有意に高かった.多変量解析ではOral Frail がADL低下に対する独立した因子であった(OR 6.11, 95%CI 2.11-18.72).3.56例でせん妄を認めた.せん妄発症群では年齢、入院時Frailty Scale、脳神経疾患の割合、APACHEスコアおよび咬合不全の割合がせん妄非発症群と比較して有意に高かった.多変量解析では義歯群であることがせん妄発症に対する独立した因子であった(OR 11.77, 95%CI 4.70-33.11).【結論】咬合不全はICU患者において、高い死亡率、ADL低下とせん妄発症と関連している可能性がある.また義歯使用者にせん妄が多く、適切な義歯の取り扱いがせん妄対策になる可能性がある.