[O66-1] 胸腹外科周術期患者における術前の身体機能が術後経過に及ぼす影響:多施設共同コホート研究
【目的】近年,低侵襲手術や周術期管理が発展している反面,適応患者の高齢化により,依然として術後合併症を併発するリスクが存在する.本研究の目的は,胸腹部手術待機患者における術前の身体機能が,術後合併症の発症および経過に及ぼす影響について明らかにすることとした.【対象と方法】2015年11月から2017年12月までに研究協力施設にて,呼吸器外科および消化器外科の胸腹部手術待機患者を登録し,前向きに調査した.術前身体機能として,握力,下肢筋力,簡易型身体機能評価バッテリー (SPPB),6分間歩行距離,日常生活活動 (ADL) を評価した.SPPBを10点でカットオフし対象者を2群に分類,Clavien-Dindo分類による術後合併症,術後7日目 (POD7) のADLおよび術後在院日数について両群で比較検討した.【結果】全対象者1,018例のうち57例を除外した961例を解析対象とした.対象者背景として平均年齢は70歳,呼吸器外科は452例,消化器外科は509例であった.961例のうち低SPPB群 (SPPB<10,139例) と高SPPB群 (SPPB≧10,822例) で比較検討した結果,術後合併症に関しては両群間で有意差を認めなかったが,低SPPB群においてPOD7のADLの低下と術後在院日数の長期化を認めた.【考察】今回,胸腹部手術待機患者における術前の低身体機能が,術後経過に有意な影響を及ぼすことが明らかとなった.これらの結果は,術後の回復を促進するために術前患者の身体機能を向上すべきであることを示唆している.