[O66-3] 高齢心臓手術患者におけるICU期握力低下とリハビリテーション進行遅延は関連する
【背景】心臓手術後高齢者は身体機能低下を認め、一年後も改善しないことが報告されている。そのため退院時の身体機能低下予防は非常に重要である。身体機能低下は手術侵襲やリハビリテーション進行の遅延が関連し重要な指標である。身体機能は膝伸展筋力など下肢機能が注目されているが、握力は高齢者や心不全、外科手術患者の予後予測因子であり重要である。ICU期の握力変化の観察はリハビリテーション遅延の予測に有用であると考える。【目的】本検討は心臓手術後ICU期の握力低下がリハビリテーションの進行遅延に関連があると仮説し、心臓手術後リハビリテーション進行とICU期の握力低下の関連を検討した。【方法】本検討はretrospective cross sectional studyである。対象は2017年11月より2018年6月の間に当院にて心臓手術を行った65歳以上の症例。除外基準は術前からの歩行非自立、SPPB計測不可、術後の重篤な合併症とした。リハビリテーションは日本循環器学会のガイドラインに基づき実施し、リハビリテーションの進行遅延は100m歩行自立が術後6日目以降となった症例を遅延と定義し、遅延群と順調群2群に分け比較検討を行った。主要評価アウトカムは術後握力低下として、その他調査項目は患者背景、手術情報、術後情報とした。握力は手術前、ICU入室時に握力測定を行った。ICU入室時の握力のうち最低値を最低握力と定義し術前値からの変化率を握力変化率として使用した。 統計学的解析はSPSSを用いて対応のないt検定を行い、各項目と握力変化率をspearmanの順位相関係数を用い検討した。有意水準は危険率5%未満とした。【結果】解析対象は14例(年齢74±6歳、男性7例)であった。術前握力は平均25±9kg、%予測値平均82±20%、最低握力は平均19±7kgにて握力変化率は平均-24±14%であった。リハビリテーション遅延例は8例(57%)認めた。遅延群と順調群の2群間で有意差のあった項目は術前SPPB(遅延群7±3/順調群10±2点)、フレイル基本チェックリスト(遅延群8±4点/順調群3±2点)、在院日数(遅延群26±9日/順調群15±4日)、握力変化率(遅延群-32±11%/順調群-14±11%)であった(p<0.05)。握力変化率と有意に相関を認めた項目は歩行自立までの日数(r=-0.577)、在院日数(r=-0.729)であった。【結論】心臓手術直後握力は低下を認め、低下が著明な症例はリハビリテーション進行が遅延する可能性を認めた。