第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O66] 一般演題・口演66
リハビリテーション03

2019年3月1日(金) 11:05 〜 12:05 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:高瀬 凡平(防衛医科大学校 集中治療部)

[O66-4] フレイルが人工呼吸器装着後の歩行機能獲得に及ぼす影響

伊東 一章, 菊谷 文子 (秋田赤十字病院 リハビリテーション科)

【背景】フレイルを有する高齢患者は、新たな侵襲によって大きな健康状態の低下をもたらされる危険性が高いことが報告されている。集中治療室で人工呼吸器管理された患者の自立歩行獲得までの期間に対して、フレイルが影響するか調査研究をおこない、可能であった患者については1年後のフレイルも調査した。【方法】単施設、後ろ向き観察研究でデータは電子カルテから収集した。対象は2015年8月から2017年7月までの2年間で人工呼吸器装着(以下MV)した患者267名のうち、以下の除外基準で除外して残った26名である。除外基準はMV48時間以内、再挿管、非侵襲的人工呼吸器装着のみ、50歳未満、死亡、離脱困難、神経学的不良予測、医学的理由で歩行不能、協力同意の得られなかったものである。全例入院前は歩行可能であった。フレイルの評価はClinical frailty scale( 以下CFS)を用いて、CFS 1-3をフレイルなし(Non-frail;以下NF群)と 4以上をフレイルあり(Frail ; 以下F群)の2群に割り付けた。統計はEZRを用いて、2群間比較はt検定とMann-whitney U検定、自立歩行獲得までの期間についてKaplan-Meier解析を行い、多変量解析としてCox比例ハザード分析を行なった。患者の識別には本研究のみで用いる固有番号を付け個人特定できないよう管理した。【結果】ICU入室前CFS 4(3-6)と1年後CFS 6(4-7)で有意差が認められた(p = 0.003)。性別、APACHE2 score 、SOFA score 、離床開始までの日数、せん妄発症率、ICU在室日数、在院日数、自宅退院率に有意差は認められなかった。2群間で有意差が認められた項目は、平均年齢NF群 66±8歳、F群 79±10歳、CFS はNF群 2(2-3)、F群 5(4-6)、Functional ambulation categories はNF群5(4-5)、F群3(2-4)、Barthel indexはNF群90(85-98)点、F群65(53-88)点であった。1年後CFS低下率はNF群10 %、F群15 %(p = 0.15)であった。多変量解析の結果、フレイルは独立して有意な影響を及ぼすことが示された(ハザード比4.04、p = 0.028)。【結論】ICU入室前のフレイルは、人工呼吸器離脱後の自立歩行獲得に対して有意に影響を及ぼす。集中治療を受けた患者の1年後CFSは悪化していることが示されたが、早期離床がフレイル患者に与える効果は今後のさらなる研究が必要である。