第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O67] 一般演題・口演67
リハビリテーション04

2019年3月1日(金) 14:00 〜 15:00 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:関野 元裕(長崎大学病院集中治療部)

[O67-1] 人工呼吸器離脱の遅延因子であるICU-ADに作業療法士の取り組みが効果的であった症例

喜納 俊介 (中頭病院 リハビリテーション部 作業療法部門)

【背景】
 日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会が発表したエキスパートコンセンサスには作業療法士(OT)の役割に「精神機能の評価とアプローチ」が挙げられている。その為、PICSの要因となるICU-acquired delirium(ICU-AD)に対しても積極的に関わる必要がある。今回、人工呼吸器離脱の遅延因子がICU-ADである症例に対してOTの取り組みが効果的な改善策であると考えられたので報告する。
【臨床経過】
 ADLが自立していた80歳代の男性が両側の肺炎の診断でICUに入室して人工呼吸管理となった。OTは発症5日目に介入した。呼吸や循環動態の変動に加えて、RASS-3前後になると身体の動きが激しくなり呼吸器との同調が得られず、自己抜管のリスクが高いことからRASS-4以下の深鎮静管理が必要であった。発症12日目に気管切開術を施行した。発症14日目にHCUへ転棟して人工呼吸器離脱へ向けてウィーニングを開始した。しかし、鎮静薬を減量もしくは中断すると身体の動きが激しくなり自己抜管のリスクが高いことから四肢と体幹の抑制に加えてRASS-4以下の深鎮静管理をせざるを得ない状態であり、ICU-ADを呈していると考えた。また、深鎮静管理により自発呼吸の消失や一回換気量の減少が生じてウィーニングが遅延した。
 ICU-ADの改善を目的に主治医と協議の上、OT介入時のみRASS0~-1程度を目標に鎮静薬を減量した。その際、覚醒すると顕在化する行動の安全管理対策として常時の付き添いが必要であった為、OT介入時間は1日2時間以上に設定した。更に理学療法士(PT)や看護師、家族とも連携を図った。プログラム内容は早期離床・運動療法の他にリアリティーオリエンテーションや病棟内散歩、家族との交流も調整した。そのアプローチの2回目となる発症21日目には症例から便意の訴えがあった為、OT・PT・看護師の3人介助でポータブルトイレを使用しての排泄が成功した。徐々に意思疎通が可能となり、OTも認識できるようになった。また、RASS-1以上であれば身体機能の改善と安定した自発呼吸が維持できていることが確認できており、アプローチの5回目となる発症24日目にSBTをクリアして人工呼吸器離脱が成功した。発症26日目には一般病棟へ転棟した。
【結論】
 PICSの要因となるICU-ADを改善する為には様々な手段を講じる必要がある。症例に対するOTの取り組みはICU-ADに対する効果的な改善策の一つに成り得ると考える。