[O67-7] 薬物過剰摂取により人工呼吸器管理となった若年者の呼吸リハビリテーションの報告
【背景】当院は札幌市東区の中核病院、臨床研修指定病院として、急性期医療を担う2次救急病院であり、道内で最も多く薬物過剰摂取(以下drug over dose:OD)の搬送患者を受け入れている。OD後人工呼吸器管理となった若年2症例の呼吸リハビリテーションについて、考察を行ったので報告する。【症例1】18歳女性。13歳頃から精神科へ通院。OD、リストカットの既往あり。搬送前日の未明に睡眠導入剤、抗精神病薬の過量内服、40時間覚醒しないため救急搬送。救急隊到着時、JCS 300、舌根沈下を認めSpO2は75%。誤嚥性肺炎、横紋筋融解症の診断で第1病日より抗菌薬投与、人工呼吸器管理。第3病日に理学療法開始、排痰援助を施行した。第7病日人工呼吸器離脱、第8病日には歩行練習開始。精神科リエゾン介入。立位時動揺、歩行の安定性が得られなかった。第23病日には階段昇降可能になって自宅退院。【症例2】24歳女性。19歳頃からうつ病、妄想性障害、てんかんで精神科通院。OD、リストカットの既往あり。搬送前日の夜から意識障害を認め、改善しないため救急搬送。救急隊到着時、JCS 200、SpO2は60%、左口角に嘔吐痕あり。誤嚥性肺炎の診断で、第1病日より抗菌薬投与、人工呼吸器管理。同日から理学療法開始し呼吸介助法を行った。第5病日には病室内歩行可能。精神症状悪化を認め、第7病日に精神科病院へ転院。【考察】早期の呼吸リハビリテーション介入は呼吸状態の改善、肺炎の早期治癒に有効とされる。呼吸器基礎疾患を認めない若年患者では、下側肺障害や無気肺などの合併症予防により人工呼吸器離脱が早期に可能になると考えられた。一方、精神疾患、自殺企図のあるOD若年患者に寄り添いながらADLを向上させる難しさを感じた。【まとめ】ICUにおいて人工呼吸器装着中から早期理学療法介入により呼吸器合併症の予防と排痰援助を実施し、ADL向上を果たせた。今後も、社会的困難を抱えた患者の受け皿として、SDH(健康の社会的決定要因)に鑑みながら急性期治療とチーム連携を邁進していきたい。